「アタッチメント」の重要な効用
私はKのおっぱい好きの背景には、「アタッチメント」があるのではないかと漠然と考えていた。
遠藤先生はアタッチメントについて解説する。
「アタッチメントとは、子どもが怖くて不安なときや、感情が乱れたときに、信頼できる特定の大人とくっついて『もう大丈夫』という安心感に浸ることを意味します」
アタッチメントは母子の愛着と理解していたが、誤解していた。“信頼できる特定の大人”は、必ずしも母親である必要はないという。かつてはアタッチメントは母子関係に限られるとされていたが、最近では、父親や祖父母、保育士なども信頼ある特定の大人になりえると考えられている。
「ぜひ知ってほしいのが、子どもたちはアタッチメントを通して『人って信じてもいいんだな』という感覚をえられるということ。言いかえれば『自分は、人から愛してもらえるかけがえのない存在だ』という実感をえられるのが、もっとも大切なアタッチメントの働きです。人は、アタッチメントを通して、はじめて自分の価値を知るのです」
母にくっつく理由がわかった
さらに遠藤先生はアタッチメントについて掘り下げた。
「子どもにとって世の中は、知らないことや、怖くて不安なことばかりです。その不安をしっかり受け止めてくれる大人がいる。怖ければ必ず助けてくれる大人がいる。どんなに泣きわめいても見捨てずに、守ってくれる大人がいる……。そうした実感の繰り返しで、特定の大人であるお父さんやお母さんたちだけではなく、人全体に対する信頼感が培われていきます」
遠藤先生は、Kの朝のルーティンを念頭に続けた。
「お子さんの話をうかがうとアタッチメントというよりも、皮膚と皮膚との触れ合いを求めるスキンシップの側面が強いかもしれません。人間にはくっつきたいという本能があります。スキンシップは肌と肌がぴったりとくっついて心地がいいという体験です。もちろんスキンシップも幼い子どもの発達には必要ですが、アタッチメントとは異なります」
なるほど。朝に母にくっつくのは、心地のよさを求めたスキンシップなのか。
朝、Kは「保育園、行かない!」とたびたびグズる。保育園に行くのが不安で、母親にくっつこうとしているのではないか。

