多くの院長が気づかない残酷な現実

しかし、多くの院長がこの現実に気づきません。自分達の仕事を特別だと思い込み、労働集約型ビジネスモデルだという認識がないのです。

医療業界の仕事は、実際には典型的な“体が資本”の仕事です。体を壊せば即座に収入が断たれてしまいます。私の周りでも、若くして癌を患ったり、突然の心筋梗塞で倒れ、自己破産したり、結果的に家族が路頭に迷うケースは珍しくありません。

AIやDXの進歩を考えれば、近い将来、むし歯治療やインプラントをロボットが担うようになる可能性すらあります。

しかし、最終的な判断や患者さんとの接触は、医師自身が担うべき領域であることは変わりません。医院や歯科医院は、人が介在しなければ回らないビジネスモデルなのです。

病院のベッドに老人女性
写真=iStock.com/svetikd
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したがって、私達は経営の考え方をインストールして「経営者」にならない限り、いつまでも「現場の労働者」という現実から逃れられません。

もちろん、なかには成功している院長もいます。その人達は、経営者として仕組みを構築することで、自分の体が資本となる労働集約型ビジネスから脱却しているのです。

「技術が高ければ、患者が来る時代」の終焉

人口減少が進み、医院間の競争がますます激しくなるなかで、小規模な医院の生き残りは厳しさを増しています。とくに歯科業界では、個人事業主の小規模医院と大規模法人の二極化が進み、大規模法人に患者さんと人材が集中しやすくなっています。

30年前、全国の歯科医院数に占める医療法人の割合は5%未満でしたが、現在は20%以上に達しています。さらに医療法人の売上は増加する一方、個人医院の売上は減少傾向にあります。

小規模医院にとって、とくに厳しくなるのが人材の獲得です。なかでも厳しいのが、歯科医師や歯科衛生士以外の職種の採用です。理由は、専門職以外の人材は大企業や他業種とも競合するためです。

現時点で、専門職である歯科医師や歯科衛生士の採用もうまくいっていないとすれば、相当危険な状況といえます。さらに今後は歯科衛生士も、一般企業に流れる傾向が加速する可能性があります。

こうした状況を踏まえて、小規模医院には人材獲得のための戦略的な取り組みが必要になります。

時代は大きく変わりました。内向きの職人気質や家族優先の発想では、もはや生き残ることは出来ません。患者さんや働き手が何を求めているかを常に考え、市場の変化に合わせて柔軟に対応していく。それこそが、これからの時代に求められる経営者の姿勢といえます。