人生の夏は30代・40代

「初任給100万円でいかがですか?」

そんな甘い誘いに飛びついてしまう若い医師・歯科医師が、最近増えています。研修を終えたばかりで、まだ何の実績もない彼らが高収入を得てしまうことは、その後の彼らの人生にとって大きな問題があります。

私達の人生は、春夏秋冬にたとえることができます。人生の春である10代・20代は、インスピレーションが湧き、さまざまなことを吸収できる貴重な時期です。この時期にどれだけ頑張ったかで、人生の夏である30代・40代が決まります。

30代・40代はもっとも脂が乗った時期であり、もっとも稼げる時期でもあります。人生の秋である50代・60代になると、体力が落ち、パフォーマンスが低下し始めます。人生の冬である70代以降になると、さらにパフォーマンスは低下します。

人生で成功するために必要な3つの資本があります。人的資本、社会資本、そして金融資本です。人的資本とは、私達医療従事者でいえば医師免許を取得し、さらに知識や技術を高めることです。

人生の春である10代・20代は、まさにこの人的資本を身につけるために必要な時期です。人的資本が身についてこそ、夏の30代・40代で社会的に認められる社会資本が身につき、結果として金融資本もついてきます。

メモを書くアジアの若い女性医療従事者
写真=iStock.com/koumaru
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20代で高収入のお金だけに走った勤務医の末路

ところが、最近の若い方の多くは、このような順番があることに気づいていません。

SNSで派手に稼いでいることをアピールする同世代の姿などを見て、人生の春である10代・20代で人的資本を育てることを飛ばして、いきなり社会資本や金融資本が手に入ると錯覚してしまうのです。

そんな彼らが飛びつくのが、初任給100万円の仕事です。普通に考えれば、研修を終えたばかりで人的資本がまだ十分に備わっていない歯科医師が、100万円も稼げるはずがありません。

考えられるのは、よほど無理な診療をさせるか、利益優先のあってはならないような診療をさせるか、そのいずれかです。

人生において大切な10代・20代の春の時期をこのようなことに使ってしまうと、医療従事者として本来身につけるべき知識や技術が身につかないため、人的資本が育ちません。

最近増えている、研修を終えた医師が最初の就職先として保険診療ではなく美容医療分野を選ぶ“直美ちょくび”も同様です。

一度甘い汁を吸ってしまうと、もう後戻りは出来ません。子どもに大金を渡すようなもので、お金のありがたみも使い方もわからないまま、金の魔力に踊らされてしまうのです。