※本稿は、原マサヒコ『トヨタの時短術』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。
仕事が早い人は他人の知恵を使いこなす
「時短」というのは、各タスクの効率化を図り、全体のスピードを上げていくことでもあります。しかし、それだけではなく「成果への近道をたどる」ことも重要です。そのためには、「ベンチマーキング」という考え方が非常に効果的です。
ベンチマーキングというのは、簡単にいうと、成功事例を模倣しながら成功に近づいていくことです。商品開発でまるっきり他社のマネをしてしまうのは法律的にも道義的にも問題がありますが、成果への近道をたどるために手段を模倣することは問題ありません。
あなたも、会社に入ってから「先輩の背中を見ながらマネをして成長した」という経験があると思います。その動きを先輩だけでなく他社や他業界にまで広げていくということです。成功分析は、自分自身が体験した成功の要因を明確にすることで成功の再現性を高めるための方法です。
一方、ベンチマーキングは、他社や他業界の成功要因から学びを得て、成功に近づいていくためのノウハウといえます。「学ぶ」の語源が「真似ぶ」なのは有名な話ですが、成長するための学習というのは「マネをしながら、そのプロセスに慣れていくこと」でもあります。
トヨタもジョブズも真似から革新を生んだ
そのために、「本物をお手本にする」のは勉強のやり方として極めて有効なのです。トヨタも昔、アメリカ視察にいった際に「スーパーマーケットの在庫管理方法」を模倣し、自社独自の在庫管理方法にアレンジしていきました。それが有名な「カンバン方式」です。
トヨタだけでなく、モノづくりの世界では、よく名機の「デッドコピー」を作るということを行います。デッドコピーとは、部品や製品を寸法から材料まですべて分析して100%同じものを複製することです。
完璧に複製していくことで、最高の部品や製品がどういった設計思想でどのように作られているのかを追体験し、「理想的な設計とはどうあるべきか」を実践的に学ぶというわけです。iPhoneを生み出したAppleのスティーブ・ジョブズも、「素晴らしいアイデアを盗むことに、恥を感じてこなかった」と語っています。
ジョブズですらゼロから考えるのではなく、他社の技術を組み合わせて新しいコンセプトを作る術を身につけていたのです。この「ベンチマーキング」に会社全体で取り組んでいたことで有名なのが、下着メーカーのトリンプです。

