佐藤官房副長官は選挙の洗礼を経てない

首相や木原官房長官は、国会対策の経験に乏しく、参院の政治力学と文化に疎いのだろう。参院は常に衆院への対抗意識があり、時に与野党で結束して衆院に対峙することもある。解散がなく、6年間の任期が保証されているため、首相の威光が届かない。

参院自民党には、総裁の人事権も及ばない。参院議員会長は選挙で選出され、参院幹事長などの人事を自ら決定する“独立国”なのだ。与野党に人脈を持つ、参院のドンとされる実力者が時に現れる所以でもある。

歴代政権では、村上正邦参院議員会長が小渕恵三政権で存在感を示したほか、小泉純一郎首相が青木幹雄参院議員会長、安倍晋三首相が青木氏を師と仰ぐ吉田博美参院幹事長と人間関係を築き、安定政権に繋げてきた。

佐藤啓
佐藤啓・内閣官房副長官(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

高市首相は当初、参院のキーマンである石井氏を軽視していたのだろう。昨年10月の政権発足時の官房副長官人事で、旧安倍派の不記載(裏金)議員の佐藤啓氏(参院奈良選挙区)を充てたが、石井氏は選挙の洗礼を経ていないと適格性を疑問視し、参院議院運営委員会などへの出入り禁止を主導した。

首相は、事前に石井氏に「(佐藤氏を)よろしく」と電話一本入れただけで、事態の深刻さを把握しようとしなかったという。

佐藤氏は、衆院選大勝後の特別国会で、ようやく参院への出入り禁止が解かれたが、首相と石井氏らの「冷戦」は続く。

「日本の機雷掃海の技術は世界最高だ」

高市内閣の支持率は、なお高い。3月の日本経済新聞世論調査(27~29日)で72%と前月調査から3ポイント上昇し、3カ月ぶりに7割台に回復した。不支持率は3ポイント減の23%だった。日米首脳会談について「評価する」が65%、「評価しない」が23%で、これが支持率を押し上げたとみられる。ホルムズ海峡の安全確保のために、自衛隊を派遣すべきか聞いたところ、「派遣すべきでない」が74%、「派遣すべきだ」は18%だった。

日米首脳会談の5日前の3月14日、トランプ大統領は、イランのホルムズ海峡封鎖に関連し、SNSへの投稿で「多くの国々は、海峡の通行と安全を確保するため、米国と連携して軍艦を派遣することになるだろう」「中国、フランス、日本、韓国、英国、その他の国々がこの海域に艦船を派遣することを望む」と、日本などの艦船派遣に期待を示していた。

首脳会談では、高市首相が「法律の範囲内でできることを行う」と述べ、トランプ氏が「NATOとは違う」と評価する場面もあった。首相は、停戦合意までは自衛隊の派遣は難しいとの認識をトランプ氏に伝えた。その際に「憲法9条による制約がある」と述べたことも、その後に判明している。