「(野党と)変な約束するんじゃないよ」

実は、高市首相がなぜ年度内成立に拘ったのか、未だに判然としない。「国民生活に支障を生じさせない」との理由を挙げるが、成立が例年より1カ月程度遅れても、暫定予算を用意しておけば、実体経済や国民生活に影響はないというのが通り相場だからだ。政権内からも「あれだけ衆院選で勝てば、年度内成立しなかったと言って責める人は誰もいない」(現職閣僚)と訝る声が上がる。

舞台裏でささやかれるのは、特別国会開会後、野党が求める党首討論、集中審議に応じようとしない高市首相の姿勢だという。「何でできないの? あなたの仕事でしょ」と言うのが口癖で、機嫌が悪く、側近の萩生田光一幹事長代行や遠藤敬首相補佐官の言うことも聞かない。尾崎正直官房副長官は、首相に「(野党と)変な約束するんじゃないよ」とくぎを刺され、ストレスが溜まっている。

朝日新聞が3月28日に「高市首相は自民党執行部に、事実上の年度内成立となる4月3日までの予算成立を指示し、参院で調整されている集中審議にも応じない意向だ」と報じたが、官邸内の空気を伝えたものだろう。

参院で予算案が否決され、両院協議会で不一致となれば、衆院の優越で早めに決着させられるという狙いが読み取れる。

政府与党連絡会議
政府与党連絡会議で発言する高市首相(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

「間違った報道だ」「出席する」

首相は30日の参院予算委員会で「間違った報道だ」と否定し、「求めがあれば出席する」との考えを示さざるを得なかった。

議院内閣制の要諦は首相が常に議会の信任を意識することだが、高市氏はどこか勘違いしているのではないか。

国民民主党の伊藤孝恵氏は、菅義偉、岸田文雄、石破茂の歴代首相が参院予算委の集中審議に24~40時間応じたのに、高市首相は30日時点で4時間だと指摘した。その後の与野党折衝で、最終的に集中審議は11時間、審議時間は59時間に積み上って衆院に並ぶ。

予算案の参院審議と並行して、参院自民党による多数派工作が進む。松山、萩生田両氏は30日、日本保守党(2議席)の百田尚樹代表らと会談し、外国人政策やスパイ防止法制定に関する両党協議の設置で合意することで予算案への賛成を取り付けた。加えて、チームみらい・無所属の会の尾辻朋実氏、無所属の斉藤健一郎、平山佐知子、望月良男の3氏が賛成に回ったのだ。

26年度予算は、参院自民、立憲民主両党の協議で、4月11日の自然成立を待たずに、6、7両日の参院予算委で首相出席の集中審議などを経て、7日の参院本会議で成立した。

松山、石井両氏は、参院を軽視しては政権運営が立ち行かない、というメッセージを首相に送り付けたことになる。今後の法案の審議では、参院で否決されたら、衆院の3分の2による再可決に持ち込むことができるが、少数与党は28年参院選まで続くだけに、この力業をたびたび使うわけにはいくまい。