「13日に衆院通過なら、年度内成立だ」

予算案成立までの「つなぎ」として、暫定予算が3月30日の衆参本会議で可決、成立したのだが、高市首相はそれ自体、面白くなかったらしい。その直後の自民党役員会で、厳しい表情でこう不満を露わにした。

「参院幹部の皆様に最後までご尽力いただいたが、年度内成立が実現しなかったことは、残念だ。国民の安心と強い経済構築のためという思いを野党と共有できなかった」

これを受け、石井準一参院幹事長が立ち上がって「予算を年度内に成立できず、申し訳なかった。参院として体制を強化する」と陳謝したのだが、額面通りには受け取れない。

石井準一
自民党の石井準一参院幹事長(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

松山政司参院議員会長や石井氏は、少数与党の参院での予算案審議は、衆院のような強引な手法は通じないことを木原稔官房長官らに再三にわたって伝えていたからだ。

ボタンの掛け違いはどこにあったのか。首相官邸から言わせれば、石井氏が3月初めに「予算案を13日に衆院通過してくれれば、参院で年度内成立を図る」と言ってきたから、坂本哲志衆院予算委員長に3日以降、委員会開催や日程を職権の乱発で決めさせ、例年70~80時間の審議時間のところ、わずか59時間で採決させたのに、話が違うとなる。

参院自民党から言わせれば、予算案の年度内成立は国民民主党(22議席)が賛成するというのが前提条件だったはずで、その計算を狂わせたのは誰だったのか、ということだろう。参院では、自民党と日本維新の会の与党会派は120議席で、現在の過半数(124議席)に4議席足りないのだから。

「玉木氏は『おかわり君』と呼ばれる」

国民民主党は、玉木雄一郎代表が昨年末に予算案に賛成する意向を示していたが、1月の衆院解散を「経済後回し解散」と批判し、首相と距離を置く。3月初旬、坂本予算委員長の13日の衆院通過に向けた強引な日程設定に反発し、党の方針を転換した。自民党の鈴木俊一幹事長が10日、榛葉賀津也幹事長との会談で、13日の衆院通過への協力を求めたが、榛葉氏が審議時間不足などを理由にこれを拒否したのである。

国民民主党は13日の採決当日、榛葉氏が鈴木氏に「衆院採決が16日なら、予算案に賛成する」と持ち掛けたが、首相官邸が受け入れなかった。首相に近い筋は「玉木氏は『おかわり君』と呼ばれている。一つ譲ると、また次の要求が来るからだ」と説く。首相官邸と国民党との相互不信感がそれだけ強まったからなのだろう。

この結果、参院では予算案以外の法案でも国民党の協力は望めなくなった。

石井氏の陳謝には、首相官邸に「13日」と提示したことで、首相らの強硬姿勢が正当化され、国民党の離反を招いたことへの反省と皮肉が込められている。年度内不成立は「不測の事態」ではなく、当然の結末ではなかったのか、と。