「現状」を起点にする問題意識
佐々木市長は「問題意識」の重要さをまず、挙げた。
そこから何をやるべきかという、テーマが見えてくる。何と言っても、人口減少対策が最重点課題だった。
就任当時、豊後高田市は「消滅可能性自治体」だと公表されていた。これは民間の有識者等でつくる「人口戦略会議」の予測で、若い女性が30年間で「50%以上減少する」とされたのだ。数にして、2010年には2031名だった若年女性人口が、2040年には978名にまで減るという推計だ。
そこで、「人口増施策」と「新たな観光振興」の2つを柱に据えた。
どうすれば、人口が増えるのか。佐々木市長の出発点は、あくまで「現状」だ。そこに、「大黒柱の夫に専業主婦の妻、子ども2人」といういまだ“標準世帯”とされる、古き良き“日本の家庭”という理念や幻影は微塵もない。
「子どもを産む若い世代は、まず所得が低い。かつ、ほぼ夫婦共働き。では、子どもを産んだらいったい誰が子育てをするのか、経済的負担はどうなるか。この課題が解決できればおのずと、地域の魅力づくりにもつながるんです」
佐々木市長は就任の翌年に幼稚園、小中学校の給食費の無料化、高校生までの子どもの医療費の無料化、小中学校の放課後学習サポートを無料にするという、大胆な子育て支援策を打ち出した。これが、全国トップレベルを誇る子育て支援策の第一歩だった。
「無料にすることで、差別がなくなるんです。給食費を納める家と納めない家があって、それが子どものいじめに発展する。無料にすれば、いじめがなくなるでしょ」
では、そのための財源をどうするのか。
“財源の無駄”にメスを入れた佐々木市長
「基本は、ふるさと納税の活用です。給食費と医療費で9000万円は必要。ふるさと納税の寄付金は1億4000万円で、経費を引いたら7000万円しか残らない。そこで、現状の“財源の無駄”を整理しました」
2017年の就任当時から、ゴミ清掃工場の維持補修費、し尿処理場の管理料、ケーブルテレビ端末の入れ替えなどにメスを入れ、約33億円の節約を可能にした。
「すべて、担当職員に感謝しかありません。職員は問題意識を共有して、努力して取り組んでくれました」
ふるさと納税の寄付額は翌年には倍増し、その後5年間で寄付額は4億円以上に拡大したという。これは子育て支援に対する、市の「本気」が伝わったことが大きい。

