1番目は、社内コミュニケーションの問題である。

この手の営業マンは、業態で言うと商社ではなくメーカーに多い。特に「いいものをつくっているのだから売れるに違いない」というプロダクト・アウト的な発想が残っている会社である。

営業マンに聞くと、「この商品を出すことで、何をしたいのかがよくわからない」「会社は本当に売れると思ってつくっているのか」という声が多かった。つまり、営業と開発や製造との間に大きな溝があって、開発の意図が営業まで伝わってこない。別の言い方をすると、コミュニケーションのパイプが目詰まりしているのである。

2番目の要因は、ライバル企業との関係である。

これは成熟市場によく見られるタイプだが、「競合と比較して自信が持てない」ということだ。

たとえばその業界は3社でシェアを分け合っていて、1位と2位は拮抗しているものの、3番手企業は大きく引き離されているとする。その3番手の営業マンが「既得権が少ないからこそ、こういう新しいことができるじゃないか」と発奮するのではなく、「弱くても利益は出ている。シェアを引っくり返す努力をしても意味はない」と、負け犬の地位に安住してしまうのだ。

「競合と比較して価格が高い」という“言い訳”も目立った。これは完全に売り方のスキルの問題である。

優秀な営業マンなら、顧客に「おたくとたいして変わらない商品をA社は2割も安く持ってきている。おたくは努力が足りないんじゃないか」と値下げを要求されても、「この商品は高価ですが、価格に見合うだけのこのような付加価値があります」と顧客を納得させられる。それができない営業マンは、価格競争で敗れ、商品にも自信を持てないということになる。