④転職や管理職昇進の決め手にならない
企業や官公庁に入ると、ビジネスパーソンとしての経験と実績、個人のパーソナリティと能力が、個別の人材評価の主要な要素になっていく。雇用の流動化で、近年活発化している大卒ホワイトカラーの転職市場では、大量のエントリーを効率よく捌く必要がないので、新卒就活のときのように学校歴ランクが見比べられることはない。日東駒専卒でも地方国立大卒でも大差はなくなるだろう。
よって、就活入社時に、手に入れたばかりの「学歴カード」を一回限りで使っていた終身雇用の時代と比べると、やり直しが利くようになった分だけ、生涯を通じた学歴の効用は弱まっているとみてよいだろう。
管理職への昇進においても、官僚などの一部の職を別とすれば、学部レベルの学校歴の細かな差が決定打になるということはやはり見込めない。学歴を最も重視するはずのアカデミアでも、教授昇任の可否が学部卒の大学名で変わってくるなどという例は聞かない。
逆にトップレベルの大学では、研究業績を重視するために、学閥が幅を利かせることは少なくなり、他大学の卒業者が数多く登用されている。「浪人してでも東大に入っておいてよかった」と30代以降で実感する機会は、以前ほど多くはなくなったのではないだろうか。
⑤学歴が機能するのは「ファミリー局面」
では、学校歴はどんなときに切り札として働くのだろうか。
議員や首長などの公職選挙に立候補すれば、そのときは出身大学が見極められる。もっとも、昨年話題になった伊東市長の学歴詐称では、東洋大学という銘柄が問題になったわけではなく、あくまで「非大卒なのに大卒学歴だと偽ったこと」が問題とされたことに留意したい。
その他、各種メディアに出演する著名人や作家などとして、経歴を公表する場合には、どこの大学を出ているのかは一定の意味をもつ。しかしこれは一般人には関係ない。
意外なことだが、学歴は仕事面の「ワーク局面」ではなく、生活面である「ファミリー局面」のライフコース上で実質的な価値を発揮する。
まず結婚相手との関係性だ。日本では、義務教育、高卒、高等教育卒という学歴段階で区分したとき、同じ学歴の男女が結婚する学歴同類婚の比率が7割を超えている。大卒層は、同じ大卒層から配偶者を選ぶ傾向が強いのだ。
結婚相手を選ぶ場合には、自分自身の出身大学を基準として、相手の出身大学をみる。このとき微細な上下差を一対比較するという観点が生じ、男女ともに細かい学校歴が視野に入れられる。
それゆえに、マッチングアプリや婚活サイトでは、学校歴は必須のプロフィールとされ、相手選びの初期段階で見極められる。一般に女性からみた場合、社会的地位が自分より上位の男性との結婚を望む「ハイパーガミー」という傾向があることが知られている。
就活では、自社が求める人材という漠然とした枠に対して、学校歴は参考とされるにすぎないが、ここでは、選び手の側に「自分と同等の○○大学以上」という絶対的な判断基準がある。
そしてパートナーとの上下関係は、親族や学友たちからも見定められるのではないか、とも考える。このとき、細かな大学銘柄の優劣は、鋭敏に意識されることになるのだ。この局面では、一般社会でいわれている序列が明確な効力をもち、たとえば早慶卒とMARCH卒、MARCH卒と日東駒専卒の間にはチャンスの差が生じてしまうことがありうる。

