恋人に満足している人ほどよく眠る

恋愛が成就し安定したパートナーになる……そんな関係は夜の睡眠にどんな影響を及ぼすだろう? パートナーの有無と睡眠の関係についてのエビデンスは矛盾しており、ある研究では未婚だと夜よく眠れないという関連性を示し、別の研究では独身だとよく眠れると指摘している。

前者には研究対象にホワイトカラーが含まれていたのに対し、後者ではパンデミックによるロックダウン中の軍人男性を対象に調査していた。軍人たちは長期間自宅を離れることに慣れていたが、パンデミックで予期せず自宅に戻ることになった。

突然家庭生活に適応せざるを得なくなった既婚者群は多くのストレスを感じた可能性があり、これが睡眠問題が増えた理由かもしれない。

恋愛相手がいることで夜の睡眠が改善されるとは限らない。科学的には、恋愛関係の影響はその結びつきの質で決まるとされている。本人たちが恋愛に満足している場合には睡眠の質がよいと感じる。相手との関係がポジティブに感じられることは、睡眠時間の長さにも関係する。

ある研究では、恋愛相手から社会的に支えられていると感じている人々の主観的な睡眠の質は15年間にわたってよかったことがわかった。良好な恋愛関係は睡眠の質を高めるのかもしれず、これは理にかなっている。日々のストレスが少なければ夜の睡眠の質もよくなるからだ。

相手との関係によってはストレスが非常に多い場合もあるだろうが。

抱き合って眠るカップル
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寝る前の口論は「悪い記憶」を残す

睡眠の状態が悪いと、相手との関係に問題が増える可能性もある。相手と対立中ならもちろん、そうでなくとも関係に影響が生じるだろう。3章では夜の睡眠が感情や活力レベル、集中力、記憶力に及ぼす影響について述べた。

睡眠の問題で疲れていると、相手の身になって物事を考えられなくなりがちだ。事実、よく眠れていないと思いやりを持てなくなり、機嫌が悪くなるなどの問題につながる可能性がある。二人ともよく眠れていたとしても、対立が思うように解決しないことはよくある。

どちらかが眠れない最悪な夜を過ごしたりしていれば、会話はますます対立を深めることとなる。よく、口論したまま寝てはいけない、対立は寝る前に解消すべきだと言われるが、実際にこの考えを裏づける研究もある。

脳の特定の活動により、睡眠中はネガティブな記憶を抑制する効果が低下し、その結果、悪い記憶ばかりが脳内に蔓延することになる可能性がある。ネガティブな出来事を忘れるのが難しくなってしまうのだ。

これに関与する脳の組織は感情に大きな役割を果たす扁桃体と、情報の長期記憶に重要な海馬である。というわけで、たとえ頼んだことをしてくれなかったと相手に腹を立てていたとしても、傷ついた心をなんとかなだめすかして就寝前にお互いの意見の違いを話し合おう。