中国系業者が牛耳るツアー業界

中国人観光客の多くは旅行予約サービスのCtrip(Trip.com)や通信アプリのWeChatで予約を済ませ、中国系カフェや相部屋で安く泊まれるゲストハウスを利用する。観光客がいくら増えても、地元業者にカネは落ちない。

繁忙期にはホテル代が跳ね上がり、地元住民ですら宿泊先を確保できなくなった。ムルマンスク州のアンドレイ・チビス知事は、アジアからの観光が地域経済を後押ししていると強調するが、住民は聞く耳を持たない。

割を食ったのは飲食や宿泊の業者だけではない。サウスチャイナ・モーニングポストが2021年に報じたところでは、中国語を話すロシア人正規ガイド400人超が数年で職を追われた。宿泊・食事代込みの1週間のオールインクルーシブツアーが約1000ドル(約15万円)まで値崩れし、専業のロシア人ガイドたちは安すぎて食べていけなくなった。

白タクが横行しているとの報道も出ており、中国客を受け入れるロシア側に経済メリットは薄い。

「まったく礼儀というものがない」

カネの流れとは別に、もう一つの大きな問題がある。マナーだ。

北極圏の港町ムルマンスクに2024年、オーロラを求める中国人観光客が約2万6000人押し寄せた。前年の5倍だ。だが、地元は歓迎ムードとはほど遠かった。

ムルマンスクから約120km離れたテリベルカで撮影されたオーロラ
ムルマンスクから約120km離れたテリベルカで撮影されたオーロラ(写真=Ted.ns/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

モスクワ・タイムズによれば、ある列車乗務員は中国人団体客について、「まったく礼儀というものがない」と吐き捨てた。サンクトペテルブルクでも、あるホテルオーナーが中国人宿泊客を「騒々しくて無秩序」と評し、「あまり好きではない」と打ち明けた。「イラン人やヨーロッパ人の客のほうがずっと仕事がしやすかった」と漏らしたという。

住民はついに行政に対処を求めた。メデューザによれば、2025年2月にムルマンスク州のアンドレイ・チビス知事が開いた公開会議で、「中国人は不潔で、ゴミを捨てていく」「地元の人に傲慢な態度をとる」と排外的な声が噴出した。

すべての中国人がそうではないことを考えれば、差別的な言動ではある。だが、こうした過激な発言が飛び出すほど、住民の怒りは頂点に達している。