ツアー代金の同額以上がぼったくられる

バイカル湖の悲劇では、正規ツアーに参加しなかった一部の中国客が犠牲者となった。ただし、ツアーに申し込んだとしても、中国客が安全にロシアを旅行できるとは限らない。

サンクトペテルブルクの一角に、中国人団体客しか入れない琥珀専門店が軒を連ねている。ロシア人が足を踏み入れれば、警備員にすぐ追い返されるような店だ。

サンクトペテルブルク
写真=iStock.com/Sergi Formoso
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では、だれを商売相手にしているのか。中国国営英字オンライン誌のシックス・トーンによると、客を送り込んでくるのは格安パッケージツアーだ。航空券・宿泊・観光込みで、8日間わずか500ドル(約7万5000円)。旅行会社はその赤字を現地で埋める。

すなわち、中国系土産物店に客を誘導し、美術館チケットを定価の10〜20倍で転売し、無料の公園でさえ入場料を徴収するのだ。こうしてツアー参加者から追加費用を取っており、その中央値は500〜600ドル(約7万5000〜9万円)に上るという。格安だったはずのツアー代金を、あっさり上回る。

定価の10倍で買わされるコスメ

先の琥珀店などで観光客を待ち構えてツアー客を「洗脳」するのが、「グレーガイド」と呼ばれる無認可のガイドだ。香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストは2021年、ガイドが琥珀の「奇跡的な薬効」を謳い、延々と購入を迫る事例を明かした。

売りつけるのは琥珀だけではない。ロシアの廉価コスメ、バーブシュカ・アガフィアの定価わずか50ルーブル(約75円)のマスクが、ガイドの手にかかれば500ルーブル(約750円)に跳ね上がる。

米国際問題シンクタンクのカーネギー国際平和基金は2018年の報告書で、宝飾品・土産物店の粗利率は平均200〜300%、偽琥珀に至っては1000%を超えると分析した。土産物店の日商は最大400万〜500万ルーブル(約600万〜750万円)にのぼり、売上の30%が旅行代理店に、さらに30%がガイドに流れる。

ロシアのある旅行業関係者は、サウスチャイナ・モーニングポストの取材で、「本質的にねずみ講だ」と断言する。在ロシアの中国系旅行会社がダンピングで既存業者を締め出し、ガイドに1シーズンあたり1万5000〜2万ドル(約225万〜300万円)の登録料を課しているという。ロシアを舞台に、同じ中国人同士で、搾取の加害者と被害者になっている。