「野蛮な敵」「卑怯者」のイメージ

作家のトム・エンゲルハート氏は『勝利文化の終焉』(The End of Victory Culture)という本で、17世紀以来約250年にわたり白人植民者がアメリカ先住民と戦闘を続けた際、「野蛮な戦いを仕掛けてくる非白人の敵」を打ち負かすことを白人の使命のように見なす物語が作られ、アメリカ人の意識の中に深く根を下ろした、と指摘する。

Tom Engelhardt『The End of Victory Culture』(University of Massachusetts Press)
Tom Engelhardt『The End of Victory Culture』(University of Massachusetts Press)

そしてこの「野蛮な非白人の敵」の姿が、真珠湾攻撃を行った日本人とまさにぴったり重なった、とエンゲルハート氏は見ている。そうだとしたら、それはアメリカのレイシズム(人種差別)の発現でもあるが、パールハーバーはかなりよろしくない形で、アメリカ人の深層心理に食い込んでいることになる。

アメリカでは広島・長崎での原爆使用とパールハーバーはよく対置され、「日本人はパールハーバー(という卑怯な行為)をしたのだから」と言い訳のように使われることがあるが、通常兵器による軍事基地攻撃と、大量殺戮兵器である原爆による密集した市街地攻撃を同等に扱うこと自体がおかしい。