トランプ関税の影響で3%台まで縮小したとはいえ、ならして見れば、原油外収支の赤字は名目GDPの5%程度だ。そもそもエネルギー関連産業が持つアメリカ経済への波及効果は限定的だから、アメリカからエネルギーの輸出が増えたところで、国民がその恩恵を感じることはない。対して、国民はエネルギー高の痛みを強く感じることになる。
11月の中間選挙が危うい
現に、アメリカの原油価格(WTI)はヨーロッパ(ブレント)より安いが、水準そのものは上昇している。このままの状況が続けば、折角2%台前半まで低下してきたアメリカの消費者物価も、エネルギー高の影響で伸びが再び加速する(図表2)。これでは国民の不満が募るため、トランプ大統領は11月の中間選挙で勝つことができない。
トランプ大統領は貿易赤字の削減を政治課題に掲げている。当初はそれをトランプ関税という強引な手段で実現しようとしたが、この取り組みは事実上、頓挫している。しかし、トランプ大統領が誘発した今回のエネルギーショックが、アメリカ景気を失速させ、結果として貿易赤字の削減につながるとしたら、それはこれ以上ない皮肉である。
いつまで円安を放置するのか
エネルギーは経済活動の血液だ。その価格が上昇すれば、ありとあらゆるモノやサービスの価格が連れ高となる。それだけではなく、数量そのものが不足すれば、モノやサービスの生産そのものが覚束なくなる。優先されるべきは、とにかく数量の確保である。数量を確保するうえでは、産油国との政治交渉のみならず、強い通貨が武器になる。
石油やガス以外のモノを購入したい産油国の立場からすれば、貿易を通じて獲得したいのは、購買力が高い強い通貨である。それは流動性の観点からはドルであるし、政治性の観点からはユーロだろう。円が好まれる理由がないからこそ、有事でも円は一向に買われない。こうした状況を、政府と日銀はいつまで放置し続けるのだろうか。
輸出を吹かすためには円安が必要だといっても、そもそもエネルギーが無ければ、輸出するモノが作れない。中東へのエネルギー依存度を下げ、他の産油国との間でエネルギーの安定調達を進めるためにも、強い通貨は欠かせない。弱い通貨を放置するなら、日本は価格と数量の両面からエネルギーショックの悪影響を強く被るだけである。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)



