「企業買収」以上の重みを感じた闘い
僕らは、日本のプロ野球界や球団について詳しく調べ始めた。買う以上は利益を生む組織にしたい。それに、ファンにも喜んでもらいたいではないか。
シミュレーションの結果、球団の黒字化は「そう難しくはない」と思えた。
観客が入っていない、地域と密着していない、スタジアムと一体的な経営ができていない、ゲームもつまらない……。問題点は明確だし、改善策も本腰を入れれば見つかりそうだ。でも1つ、謎があった。
「近鉄は、なぜ今まで赤字を垂れ流していたのか。有効な手を打てなかったのか」
それは一球団だけの問題ではなく、野球界の旧態依然とした体質に原因があるのかもしれないと思い至った。ならば、僕の挑戦は、「企業買収」以上の意味を持つ闘いになると予想していた。
2004年6月30日、僕らは記者会見を開き、大阪近鉄バファローズ買収に名乗りを上げた。記者会見を開いたのにはワケがある。そうでもしないと、正式なオファーすら許されない感じだったのだ。近鉄は当時、(難航中とはいえ)オリックスとの合併話が進んでいたし、他球団のオーナーたちも「1リーグ制」に移行させようとしていたため一斉に反発した。巨人の渡邉恒雄オーナー(当時)には、こう言われた。
「オーナー会議で承認しなきゃ入れない。知らない人が入るわけにはいかない」
要は「一見さんお断り」、明らかな門前払いである。
若い世代を拒絶する老害たちの「いじわる」
しかし不思議だった。僕たちは野球界の改革を邪魔するつもりはない。自分たちだけが儲けようと思っているわけでもない。僕らの参入は球界全体にとっても良い話だと思っていた。だから具体的な方策も発表した。
「球団株式を発行して、株主になってもらうことでファン層を拡大する」「選手にストックオプション(自社株を購入できる権利)を付与して、モチベーションを上げてもらう」「インターネットを活用して試合中継や情報配信を行う」など……。
そもそも当時の近鉄バファローズは、年間30億〜40億の赤字を出していた。僕たちが運営すれば2年で黒字になる計画だった。それなのに、なぜ拒絶されるのか?
だんだんとわかってきたこと、それは年寄りのオーナーたちによる「若い世代へのいじわる」的な仕打ちなのである。自分たちも得できる可能性が大きいのに、なぜ僕らを拒むのか。メンツを保つためなのか。

