追い詰められて「闇バイト」に

「好きなときに好きな飯が食えて、着るものがあって、安心して寝られる場所もある。それだけで十分幸せです」

男性は、3月で専門学校を卒業する。就職先も決まり、4月からは会社の寮に入って働く。将来はイラストやミュージックビデオの制作で独立するのが夢だ。

先の荒井さんによれば、追い詰められた若者が「闇バイト」に取り込まれるケースもある。SNSでには「即日高収入」「簡単な仕事」を謳う投稿があふれ、住まいも収入も不安定な若者が巻き込まれやすいという。

こうした負の連鎖を断ち切るため、サンカクシャでは「居場所」「住まい」「仕事」の三つを軸に支援を行っている。居場所として、豊島区内に昼間の居場所の「サンカクキチ」や、夜間の居場所として「ヨルキチ」を開設。住まいを失った若者には、シェルターとシェアハウスを用意している。ただ、「最大の課題は仕事の支援」だと荒井さんは言う。

「親からDVを受けていたりすると、知らない大人と一緒に働くことに強い不安を抱く若者が多くいます。居場所と住まいをつくっても、仕事が決まらず、自立に至らない若者がほとんどです」

そこで同法人は、飲食事業や清掃事業を立ち上げ、雇用の場を創出する取り組みを開始した。今後は様々な分野に事業を拡大し、安心できる関係性のなかで働ける環境を整備することで、自立への道をつなげることを目指している。

支援を必要とする若者の実態調査を

見えない貧困をなくすにはどうすればいいか。荒井さんは、そもそも「若者支援の制度が断片的で、実態調査が不足している」と指摘する。

「まず必要なのは、支援を必要とする若者がどれほどいるのかを把握する調査です。そのうえ、自治体が主体的に若者支援に取り組める体制づくりが不可欠です」

サンカクシャでは国会議員やこども家庭庁、自治体などと連携し、超党派の議員連盟立ち上げに関わっている。荒井さんは「若者を支えることは、将来親になる世代を支えることでもあり、貧困の連鎖を断ち切る取り組み」だと強調する。

「いまの若者は、常に『自己責任』を求められます。しかし、自己責任では乗り越えられない現実があるなか、『困ったら頼っていい』と言える社会的なセーフティーネットが必要です」

前出の大西さんも、民間の力だけでは限界があるとし、「国が対策をとる必要がある」と強調する。「強くて豊かな日本をつくることは大事なことだと思います。しかし、最も弱い立場にいる人たちがケアされ生活が保障されるのは、大前提として重要です」

具体的な政策としては、直近では現金給付。中長期的には、物価連動の社会保障費増額や低所得者向け控除など、困っている人に確実に届く政策が必要と大西さんは言う。

「政治の役割は、『苦しい人を助ける』こと。社会的に弱い立場の方が、存在がなかったかのように扱われる現状に強い憤りを感じます。貧困や格差の問題を解決しない限り、日本の未来はありません」

見えないままにされている人々の苦しさに、社会がどこまで目を向けられるか。それがいま問われている。

(AERA編集部・野村昌二)

当記事は「AERA DIGITA」からの転載記事です。AERA DIGITALは『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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