世帯所得100万~200万円未満14.4%

家計に余力のない低所得層が多いことは、データからもうかがえる。

厚生労働省の国民生活基礎調査(24年)によれば、全国で世帯の所得は「100万~200万円未満」と「200万~300万円未満」がそれぞれ14.4%で最も多く、次いで「300万~400万円未満」(13.1%)となっている。全体的に生活が「苦しい」「大変苦しい」「やや苦しい」と感じる世帯は約6割に達し、物価高が賃金の伸びを上回る厳しい状況が続いている。

生活の苦しさは、数字だけでは測れない。「助けて」と言えば「自己責任」と突き放される。社会の冷ややかな視線が心理的な壁となり、貧困をさらに見えにくくしている。そうした見えない貧困が、若者に広がっている。

「見た目は一見普通の若者ですが、実態は極めて不安定な生活を送る見えない貧困です」

そう指摘するのは、東京・池袋に拠点を構えるNPO法人「サンカクシャ」代表理事の荒井佑介さん(36)。同法人は19年5月に設立。15~25歳くらいの若者を対象に、居住支援や就労支援、居場所の支援などを行っている。

荒井さんによると、20年に新型コロナが本格化すると、相談は一気に増えたという。昨年は235件あったが、スタッフ不足のため半年間は新規相談を止めていた。実質的な相談件数はさらに多いと見られる。

相談の半分以上は「住まいがない」「家にいられない」という内容。家庭内でのDVや親子不和から逃れるため家出をし、ネットカフェや友人宅などを転々としながら、日払いの仕事などを続けてきた若者たちだという。

親にも頼れない若者がほとんど

家を出たけれど身分証もないので仕事に就けず、お金がなくなって携帯電話が止まり、完全に行き詰まった段階で初めて相談につながるケースが多い。荒井さんはこう強調する。

「あまり働いた経験がない状態で、困っても親に頼れない若者がほとんどです」

そうした若者の一人が、20歳の男性だ。東日本の地方都市で育ったが、幼少期から継母による身体的・性的虐待にさらされ、小学校にも通わせてもらえなかった。その後始まった父親の暴力にも耐えかね、16歳の時、単身東京に家出をした。SNSで知り合った見知らぬ大人の家を転々としたが、お金が底をつくとホームレスになった。所持金は500円程度。公園や駐車場で夜を明かし、食パンで飢えをしのいだ。年齢を偽り、日雇いの仕事もした。

だが、それも1カ月もすると限界に達した。「明日、死ぬ」と思った時、子どもが緊急時に駆け込める「こども110番の家」に助けを求めた。その後、地元の自立援助ホームで暮らしながら高卒認定資格を取得し、2年前の18歳の時、東京の専門学校に進学することになった。その際、弁護士に紹介されたのがサンカクシャだった。都内のシェアハウスに入居した。

同法人運営のシェアハウスは常に満床。決して新しい建物ではなく、「設備が整っているとはいえない」と笑うが、家賃を払えなくなっても「部屋から出て行け」と言われる心配はない。どうやって返済をすればいいかを一緒に考えてくれるので、安心感があるという。