勝利至上主義の陰に潜む「ムラ社会」の歪み

警視庁の捜査では、疑われた監督の「指示」は認定されなかった。しかし、この事件のために設立された第三者委員会は、運動部を統括する「保健体育審議会」(現競技スポーツ部)が、問題の原因は審議会の事務部門トップだったアメリカンフットボール部監督の「独裁体制」にあったと指摘し、当時の大学理事長がこの問題を放置したとして責任を追及している。

この問題に続く同部の違法薬物事件では、あらためて日本大学の深刻なガバナンス不全が露呈した。日本大学の第三者委員会答申検討会議は改善計画を取りまとめた報告書で、組織の風土を「強固なムラ社会」と表現し、「秘密主義」や「排外主義」がはびこっていることを指摘している。

大学運動部では、暴行事件、不正入試事件、わいせつ事件、違法薬物事件などの不祥事が後を絶たない。これだけ同様の事件が続くのは、その問題の原因が個人の資質だけにあるのではなく、大学運動部に内在する勝利史上主義や、組織の閉鎖的体質、脆弱なガバナンスにあるからだろう。その批判が、大学教育そのものに及ぶのも無理はない。

広告塔か教育か、大学運動部に問う存在意義

大学運動部が「ムラ」とたとえられるように、閉ざされたこのムラのなかで、ひとたび規律が乱れると問題が広がりやすい。また、大学運動部OB・OGも含めた強固な仲間意識から、自浄作用が働きにくい。

小野雄大『体育会系』(中公新書)
小野雄大『体育会系』(中公新書)

さらには、強豪部の指導者に学内の権力が集まりやすい。学生も、競技成績がよければ学業は二の次と考える者が大半だ。

問題を未然に防ぐためには、大学当局がしっかりと運動部のガバナンスに関与していくことが重要だ。しかし、現実には、多くの大学はそうではない。特に私立大学にとって大学運動部は、大学の社会的なプレゼンスの向上に直結し、大学名の周知に大きく寄与する可能性を持っている。

このため、全国の高校から有力な選手をスカウトして、強化に力を入れる大学当局は、勝利至上主義を容認し、運動部への強い関与を避ける傾向にある。

だが、大学は教育機関である。大学スポーツもまた、教育活動の一環であるはずだ。大学運動部が起こしたさまざまな不祥事は、高等教育機関の前提となる教育そのもののあり方を問うている。

矢印の上に立ち、他の人形をなぎ倒す赤い人形
写真=iStock.com/bo feng
※写真はイメージです
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