大学の「スポーツ推薦」のあり方に疑問を抱く人は少なくない。なぜこうした制度は拡大したのか。順天堂大学准教授の小野雄大さんは「その背景には少子化による大学の生存競争がある。だが行き過ぎれば、入試の公平性や大学教育の質そのものを揺るがしかねない」という――。(第2回)

※本稿は、小野雄大『体育会系』(中公新書)の一部を再編集したものです。

大学のキャンパス
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人口急減によって始まった大学の生存戦略

1990年前後の時期、日本の高等教育が18歳人口の減少により大きな転換を求められるなか、文部省も積極的に高等教育改革に臨んでいた。第二次世界大戦終結後、ほぼ一貫して増え続けてきた18歳人口は、1992年の204万9000人をピークに、翌93年から急減期を迎えていた。

これに合わせて打ち出された政策が、「大学設置基準の大綱化」である。大学設置基準の大綱化とは、1991年7月の大学設置基準の改正を指す。この改正の趣旨は、以下3点である。

①個々の大学が、その教育理念・目標に基づき、特色ある教育研究を展開し得るよう制度の弾力化を図ること、②生涯学習の振興の観点から大学における学習機会の多様化を図ること、③大学の水準の維持向上のため、各大学における自己点検・評価の実施を期待することだった(「大学設置基準等の改正について」)。

これにより、各大学が特色ある教育課程・組織を編成できるようになったが、同時により一層各大学の自助努力が求められるようになった。特に私立大学は「冬の時代」と評されるなど、厳しい「生き残り戦略」が大学経営上の重要なテーマとなっていく。

さらに、私立大学総数は1990年度の372校から、10年後の2000年度には478校にまで増加し(「平成12年度 学校基本調査」)、競争激化が予想されていた。

ペーパーテスト依存を脱却した選抜基準

こうした大学設置基準の改正と並んで、1990年代以降の大学でもっとも重視されたのが入試制度の多様化だった。それは学力評価だけのものから、学力以外のさまざまな選抜方法の導入へと進む。

このような入試制度の多様化の象徴となったのが、「AO入試」(Adommition Office)の導入である。AO入試とは、大学の入学者受け入れ方針に適した人物を選考する入試である。

2021年度入試からは「総合型選抜入試」へと名称が変更された。1990年に慶應義塾大学が初めて実施し、それ以降増加の一途を辿り、現在では83.7%の大学が実施している(『令和4年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要』)。AO入試の最大の特徴は、受験生の能力や適性を多面的・総合的に判定する理念のもと、選抜方式の自由度を高く設定している点にある。

具体的には、次のようなねらいがある。

アドミッション・オフィス入試は、受験時の学力に過度に依存せず、将来の可能性も見通した上で、能力・適性等を多面的・総合的に評価することを目的とするものであり、ペーパーテストによる学力検査に過度に重点を置いた選抜基準を設けることは基本的には適当ではない。(「大学入試の改善について<答申>