一生に一度きりしかない消費も紹介や口コミに

CAC

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)は、以下の計算式で求められます。

CAC=顧客獲得に要した全費用÷新規顧客の獲得数

CACには、広告費や代理店販売手数料、営業の給与、間接費などといった「販売管理費」が含まれます。CACと似た指標にCPA(Cost Per Acquisition)がありますが、CACが顧客獲得に要した「全」費用であるのに対し、CPAは広告など直接的な費用をもとに算出されています。

たとえば、LTVが20万円、CACが5万円の場合、ユニットエコノミクスは

20万円÷5万円=4

となります。

一般的には、売上・粗利ベースのLTVにおけるユニットエコノミクス(LTV÷CAC)は3以上を目安にしていることが多いです。とはいえ、粗利率の高低などによっても変わってくるため、絶対的な数字ではありません。

住宅販売やリフォームなど、10年から30年に1回しか購入しないような業界は、LTVの概念にそぐわないともいえます。ただ、そういった業界こそ、LTVと一度買っていただいた後の顧客との関係を考えることが、他社との違いを生み出すことにつながります。

たとえば、OKUTAのLOHAS CLUBは、リフォーム後も年会費内で、キッチン、トイレ、風呂掃除、エアコン掃除などを提供したり、会員向けに自宅の小さな補修などを実質無償でサービスするなどの方法(各種条件あり)で、顧客との接点をつくり続けています。

一生に一度きりしかない消費も、その後のお客様との接点をとり続けることで、紹介や口コミなどにつながる可能性があります。

大企業では新規事業に複数年に及ぶ大きな赤字を許容しにくい中、スタートアップはユニットエコノミクスが見えており、エクイティによる調達ができれば、大きな赤字が続くことを前提にリスクをとって挑戦することもできます。

1年単位で利益を最大化するP/L思考ではなく、将来の利益を最大化するユニットエコノミクス思考の経営をおこなうことが、競争優位を生み出す源泉の1つになります。

お値段以上の方程式

ユニットエコノミクスを最大化するには、LTVを増やしつつ、CACを減らす必要があります。

では、CACを減らしながら、同時にLTVを増やすにはどうすればいいのでしょうか?

そのためには、「お値段以上」を生み出す必要があります。お値段以上を方程式にすると以下のようになります。

お値段以上=価値>コスト

お値段以上を生み出すには、まず価値とコストを理解する必要があります。

価値とは

価値とは、人がモノやサービスから得る便益(ベネフィット)のことです。大きく次の3つの側面があります。

1 機能的価値(役立ち)
2 経済価値(損得)
3 体験価値(感情)

1 機能的価値

「便利」「早い」「正確」など、効率性や利便性、実用性に関するものです。

【例】
●クラウド会計ソフト→自動化による記帳時間の削減
●オンライン教育サービス→忙しい経営者でも隙間時間に学べる

2 経済的価値

コスト削減や収益向上、時間節約、お得感など、数字で測れる、得につながるものです。

人は、過去の購入価格、相場、代替手段の価格などといった「参照価格」と比較し、損得を判断しています。価格が高くても「投資対効果(コストパフォーマンス)」が高いと判断されれば、選ばれる理由になります。

【例】
●業務自動化ツール→月額3万円で人件費10万円分を削減
●コンサルティングサービス→利益率を10%改善

3 体験価値

商品やサービスを通じて得られる感情的な満足、ブランド、信頼感、共感、サービスの心地よさといったものです。

【例】
●一流ホテルのようなホスピタリティ
●高級感・安心感を感じさせるUI/UX
●「自分は選ばれた存在だ」と感じさせるVIP対応

コストとは

コストは、2つに分けられます。

1 実際に支払う「価格」
2 面倒であったり、時間がかかったりするなどの「金銭以外の負担」

金銭以外の負担には、図表1の15種類があります。

コストを「価格」と「金銭以外の負担」の2つに分解すると、お値段以上の方程式は以下になります。

お値段以上=価値>コスト

お値段以上=価値>価格+金銭以外の負担

お値段以上の要素を整理すると以下になります。

●価値→機能的価値、経済的価値、体験価値
●コスト→価格+金銭以外の負担

【図表1】金銭以外の負担15種類
出所=『起業の方程式