OpenAIが不正利用のレポートを公開し始めたのは2024年2月のことだ。米テクノロジーメディアのギズモードによると、以来同社は利用規約に違反する40以上のネットワークを特定し、閉鎖してきたという。
数千アカウントを動員し、再生数は1桁
中国国産AIに切り替えてまで強行した工作の「成果」は、惨憺たるものだった。
レジスターがOpenAIの報告書をもとに伝えたところでは、工作員は高市氏を標的にしたハッシュタグ「#右翼 共生者」を展開。右翼勢力と持ちつ持たれつの存在であることを暗示する意図があったと思われるが、実質的にほとんど機能しなかったようだ。日本語として不自然で訴求力に欠ける表現であり、工作の稚拙さを象徴している。
さらに別の工作手法として、SNSのX、イラスト投稿サイトPixiv、Blogspotなど複数のプラットフォームで中傷コンテンツの拡散を図った。氏名不詳の日本人インフルエンサーにも協力を打診していたという。
OpenAIは2025年10月下旬以降にこうした痕跡を確認したが、成果は「少量」にとどまった。YouTube動画の再生数は1桁台で、Xの投稿のエンゲージメント(表示回数)はほぼゼロ。高市氏のミームを添えた投稿も、注目を集めることはなかった。このキャンペーン全体で最大の「成果」は、Pixivに投稿されたミーム1件が記録した閲覧数108に留まった。
こうした結果は、投入されたリソースの規模にまったく見合わない。OpenAIの脅威レポートで、主任調査員のベン・ニムモ氏は、この工作体制は「デジタルだけの話でも、ただの荒らし行為でもない。産業化されている」と評している。量だけは「産業」規模でも、日本の民主主義社会への浸透力はゼロに等しかった。
なお、工作のきっかけは2025年10月、高市氏が内モンゴルの人権状況を公に批判したことだったという。
戦狼外交が招いた逆効果
中国が強硬策を繰り出すほど、日本の有権者は結束した。2月8日の衆院選で自民党が獲得した316議席(衆院定数465の約3分の2)は、1955年の結党以来最多である。
高市氏は台湾への侵攻が「存立危機事態」に該当しうるとし、日本が台湾有事に対応する可能性を公言した。周知の通り存立危機事態とは、他国への武力攻撃で日本の存立が脅かされる場合に集団的自衛権の行使を認める、安全保障法制上の概念だ。
中国はこれに猛反発し、日本産水産物の輸入禁止を再発動。中国人観光客には訪日自粛を呼びかけた。テンプル大学のジェフ・キングストン教授は米ニュース誌のタイムの取材に対し、中国が当初、高市政権を短命と踏んでいたと分析し、「攻撃的な外交手法として知られる戦狼外交を強化して彼女を糾弾し、発言の撤回を迫った」と指摘。「だが、その行動は皮肉にも国内人気を高めた。日本国民が地域の覇権主義に対抗する形で支持したからだ」と続ける。
米国際政治誌のフォーリン・ポリシーが報じるように、高市氏の支持率は当時57〜68%に達した一方、自民党全体の支持率は30%どまりだった。有権者が支持していたのは党ではなく、高市氏本人だった、と同誌は分析する。とりわけ18〜29歳では支持率が約90%に迫った。
国際社会の反響も大きい。ブルームバーグは、トランプ大統領が高市氏の「力による平和(Peace Through Strength)」路線をSNSで称賛したと振り返る。ベッセント米財務長官も「日本が強ければ、アメリカはアジアで強い(When Japan is strong, the US is strong in Asia)」と発信した。中国の意図に反し、日米の結束を世界に印象づける結果となった。

