習近平が陥った自縄自縛

こうして、中国が繰り出した「あらゆる手段」は、いずれも中国側に跳ね返った。

習近平氏は今、自ら招いたジレンマに向き合っている。過去に似た先例があったと、ブルームバーグは振り返る。

2012年末、安倍晋三元首相が衆院選で圧勝し政権に復帰した際、尖閣諸島の領土紛争で日中関係は冷え込んでいた。だが安倍氏は2014年にも選挙で大勝して長期政権を確立。中国の圧力で対中方針を変えることはなかった。

両首脳が初めて会談したのは2014年末のAPEC首脳会議の場で、両国の経済関係が正常化するまでにはそこからさらに数年を要した。中国はこのときも、対日圧力をもって政権の方針を変えさせることはできなかった。

ブルームバーグは、今回の関係修復はなおさら困難だと分析する。前回は領土をめぐる対立だったが、今回は中国が最も譲れない「核心的利益」と位置づける台湾の主権が正面から絡んでいるためだ。台湾問題が壁となる以上、中国としては圧力を緩められないジレンマを抱える。

握手を交わす安倍晋三氏と習近平氏(2017年11月11日)
握手を交わす安倍晋三氏と習近平氏(2017年11月11日)(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

日中関係の先は読めない

高市氏は施政方針演説で、中国が「威圧」していると名指しする一方、日中関係そのものは「戦略的互恵関係」と位置づける柔軟な姿勢を見せた。

香港の英字新聞のサウスチャイナ・モーニングポストによると、専門家の間では、対米関係の強化を優先しつつ、米中首脳会談の結果次第で対中姿勢を調整する「二重アプローチ」をとるとの見方が出ている。

一方、中国の王毅外相はミュンヘン安全保障会議の場で、高市氏の台湾発言を、「領土主権への直接侵害」と断じた。中国側に歩み寄りの気配はない。

戦狼外交により日本社会の安全保障意識は高まり、経済制裁はかえって国としての結束を固めた。AI工作に至っては、中国の手口が国際社会の前に晒される結果に終わった。威圧すれば相手は折れる。そんな権威主義的な算段は、民主主義社会では通用しない。

ただし、高市政権も盤石とはいえない。ワシントン・ポストは、大規模な財政支出で債務が膨らみ、防衛投資の基盤を損ないかねないと指摘している。

我流を貫き失敗を認めない姿勢に、国内では不満の声も漏れ始めた。財政の課題や若年層の支持基盤の脆さが露呈すれば、国内も一枚岩ではいられない。日中関係の行方は、なお見通せない。

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