原作者という隠れ蓑
乗り出してきたのはマンガワンの担当編集者X氏だった。文春の報道によれば、「X氏は大手ドラッグチェーンの元社長の息子」という。
Aさんは「マンガワン」編集部に連絡して、連載を再開しないよう要請していたという。だが、山本とX氏は、それを何とか取り下げさせたかったようだ。
X氏がA氏にLINEで送ったところによれば、社内の枢要な部署で情報共有していたという。さらに、X氏と山本側は、「示談金150万円、山本の連載再開中止要求の撤回、この件の口外禁止」という条件も出してきたというのである。
これらの対応にAさんは不信感を抱き、示談はせず、2022年7月に民事訴訟に踏み切った。それから4年後の今年2月20日、札幌地裁で山本に「一千百万円の支払い」を命じる判決が出た。
しかし、驚くことに民事の判決が出た1週間後に、小学館が「(マンガワン連載中の『常人仮面』の)原作者の一路一氏は、『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物です」と発表したのだ。
「『常人仮面』は二二年十二月からマンガワンで連載が始まった。つまり『堕天作戦』の正式な終了からわずか二カ月後に、山本を別の名義で再起用したというのである。さらに巧妙なことに、絵のタッチが一緒だといくら名前を変えても容易に山本だと露見するため、別の漫画家を立て、山本は『原作者』として起用している」(文春)
Aさんはこのことを全く知らず、小学館の隠蔽に驚いたという。
暴かれた“もう一つの隠蔽”
さらに文春によれば、小学館はマンガワンの別の作品においても、同様の「隠蔽」を行っていたようだ。
それはマンガワンにおいて『星霜の心理士』という作品の原作者だ。
この人物はかつて、マツキタツヤという名で『アクタージュ』の原作を執筆していた。2020年8月、路上で中学生の胸を触ったなどとして強制わいせつ罪で逮捕・起訴され有罪判決を受け、集英社は同作を即打ち切りとしていた。
だが、小学館はマツキタツヤを、別のペンネームである八ツ波樹に変え、『星霜の心理士』の原作者に据え置いたのだ。
『星霜の心理士』は先に登場した編集者Xの担当ではないそうだ。ということは、小学館では少女に対する性加害の前科があっても、お構いなしにペンネームなどで正体を隠し、起用することが当然のように行われていたということになる。
今でも『小学一年生』などの学年誌を出している小学館に、あってはならない重大な不祥事である。
小学館は3月2日に声明を出し、「マンガワン編集部における作家・原作者起用のプロセスおよび編集部の人権意識を確認し、問題点を検証、原因を究明し、再発防止に向けた提言を得るために第三者委員会を設置する方針を決定いたしました」とした。
文春やSNSに投稿しているマンガ家たちのコメントを読む限り、小学館の対応が“適切”だとは思えない。

