物価高に賃金は追いつかないが…

現在の政治情勢からも明らかなとおり、デフレを脱却しても、それが直ちに経済に望ましい結果をもたらすわけではない。昨年の春闘では大企業を中心に5%前後の賃上げが実現したが、中小企業を含む全体の実質賃金は目減り傾向が続いている。名目賃金の上昇が物価上昇を上回らなければ、家計の生活水準はむしろ低下し、消費者態度指数の伸び悩みや生活防衛的な消費抑制行動につながる。

一方で、日本財政はこのインフレによって一定のベネフィットを受けている。物価上昇に伴う「ブラケット・クリープ(Bracket Creep)」によって所得税や法人税の税収が膨らみ、政策的経費も実質的に圧縮されているからだ。さらには、既発の国債は固定金利であるため、インフレによって債務残高の実質的な価値が目減り(対GDP比で改善)する効果もある。2026年度における国の予算案(一般会計当初)のPB黒字化も、このインフレによる恩恵という側面が強い。

「インフレ率より金利が低い状態」が生み出す円安圧力

インフレ経済への転換との関係で、筆者がいま最も注視しているデータが「実質政策金利(名目政策金利-インフレ率)」の推移である。