「満腹」の時代に人体は対応できるのか
飢餓、つまりは「空腹」の克服を求めて進歩してきた人間は、今やその願いを叶えました。
現代は「飽食の時代」です。食べたいものを、食べたいときに、食べたいだけ、食べられるようになりました。
そうすると反動として、やはり問題が起きてきました。
もともと「空腹」に備えて作られていた人間の体のシステムは、今度は「満腹」に対応しなければならなくなりました。
しかし、早速満腹に適応しましょうというわけにはいきません。数百万年かけて築かれたシステムは、そう簡単には変われないでしょう。
人間の体は現在、「満腹」に適応できるように、切り替わり始めたところなのかもしれませんね。
「満腹」の時代を生きる夢を叶えた結果、人間は食べ過ぎによって体調が悪くなりました。
肥満の人が増え、それによって膝や腰など体に痛みが生じ、内臓の酷使によって病気を抱えるようになりました。
糖尿病患者552万人の背景に見えるもの
私の専門とする糖尿病は、その代表的なものと言っていいと思います。日本では、「食べ放題の時代」を謳歌してきたこの40年間ぐらいで、糖尿病患者が何と50倍に増加しました。
厚生労働省による2023(令和5)年の調査では、糖尿病で治療を受けている総患者数は552万3000人となっています。そのうち、生活習慣病ではない1型糖尿病の患者は12万2000人ですから、約2%にすぎません。40歳以上では4人に1人が糖尿病になっています。
糖尿病が原因で失明する人は年間4000人を数えます。糖尿病が原因で新たに透析を必要とする人は、年間8000人にもなってしまいました。
糖尿病は今、肥満とともに社会問題化していると言えるでしょう。糖尿病ではなくても食べ過ぎは、胃腸をはじめとした内臓全般を疲弊させ、機能を低下させます。そうなれば、体の免疫力が低下し、健康が脅かされます。
食べ過ぎると糖質過剰となり、ミトコンドリア内で糖質を処理する過程で、活性酸素が生じます。これは、体の老化を早めてしまいます。そして何よりも、脂肪の蓄積を増やし、肥満になり、生活習慣病のリスクを高めることになっています。
皮肉なことに私たちは、食べるものはたくさんあっても、自由気ままに食べていたら体を悪くするという環境を招いてしまったのです。


