認知症の人は記憶より「段取り」が先に崩れ始める

認知症の初期には、記憶の問題よりも先に「段取りの乱れ」が目立つことがあります。段取りとは、いくつかの作業を順序立てて進める力です。料理や家事、スケジュールの管理など、日常生活の多くは段取りによって成り立っています。

認知症になると、この段取りがうまくいかなくなります。「料理で次に何をすればいいかわからなくなる」「約束の日時を間違える」「家事の手順に戸惑う」といった変化です。

段取りは単なる記憶力だけではなく、注意力や判断力など、複数の脳の働きが連携して初めて成り立つ高度な能力です。そのため、脳の病気によってこの連携がうまくいかなくなると、日常生活の中で「うまくいかないこと」が少しずつ増えていきます。家族が最初に感じる違和感の多くは、実はこの段取りの変化なのです。

認知症による記憶喪失のイメージ
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「同じ話を何度もする」は老化でも起こること

家族からよく聞く相談のひとつに、「親が同じ話を何度もする」というものがあります。しかし、これも必ずしも認知症とは限りません。

人は誰でも、印象に残った出来事や好きな話題を繰り返し話すことがあります。また年齢を重ねて記憶に自信がなくなると、確認のためにあえて同じことを聞く場合もあります。重要なのは、「何度聞いたか」という回数ではなく、その背景です。本当に忘れているのか、それとも確認や不安から聞いているのか。その違いを見ることが大切です。

たとえ同じ話を繰り返していても、約束を守り、家事などの日常生活が問題なくこなせているのであれば、老化の範囲内であることも多いのです。