部活再編案の決着
部活動の廃止を議論する職員会議がスタートした。校則を話し合ったときとは違って、明確な反対意見は出てこない。たぶんすべての教員が、生徒数が減るのだから部活動も減らすべきということを理解している。なかには、部活動は大きな負担(※4)になっているのでさらに削減すべきと考えている教員もいるだろう。
それでも玄岡教諭ら削減対象となる部活動顧問の気持ちをおもんぱかり、様子見をしている状態のようだ。私はここで新たな提案をした。
・女子バスケットボール部の玄岡顧問は、男子バスケットボール部顧問を兼務する
剣道部は部員1人で、卓球部は剣道部と同じ武道場で活動していた。バスケ部は顧問が違うからコートを半面ずつ使っていたが、顧問が2つを兼ねれば必要に応じて一面を使える。教員たちの視線が大河原教諭と玄岡教諭に注がれる。彼らの反応をうかがっているのだ。
2人の教諭から反対意見は出なかった。なんとか部活再編案をまとめることができ、肩の荷を下ろせた気がした。
※4 部活動は大きな負担
部活動が教員の長時間労働の要因になっていて、「働き方改革」の流れに逆行していると考える人もいる。教員組合なども「部活動は教育課程外であり、本来の勤務範囲外」とし、教員の長時間労働を是正し、部活を任意・有償にすることを主張している。
「教員不足なのに、なぜ正規採用しないのか」
「なぜ県は正規の先生をもっと採用しないのですか?」
2学期の終わり、「学校評議員会」で責めるような口調で質問された。
地域住民・保護者・有識者などが評議員として参加する「学校評議員会」は年に1、2回開かれる。校長が学校運営方針や教育活動について説明し、評議員が意見や助言を行なう「助言・意見交換の場」だ。
「正規の先生を採用しても、途中で首を切らなければならなくなるからです」
私がそう答えると、質問した評議員は驚いていた。
案外知られていないが、学校に配置される教職員の人数は法律に定めるルールにより、生徒の数に応じて決まっている。
たとえば、公立高校の学級編成の基準は、「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」〔通称:高校標準法(※5)〕によって規定されている。1クラスの上限人数は40人であり、1学年の生徒数が120人なら3クラス、121人なら4クラス(※6)となる。各クラスに担任の教諭が1人ずつつくほか、生徒数や設置する学科の数や内容などにより、その学校の教員の定数が決められる。
少子化により子どもの数が年々減少し続けている。今の子どもの数にもとづいて正規職員を採用すると、将来、子どもの数が減少した場合に配置できる教員数が「法律によって」減らされるため、解雇しなければならない。そうした場合に備え、全体の2割程度を非正規職員で対応しているというわけだ。
※5 高校標準法
全国の公立高等学校における教育水準の均衡を保ち、地域間格差を是正することを目的として制定された法律。条文で「高等学校の学級の編制の標準は、1学級の生徒数をおおむね40人とする」とされている。
※6 121人なら4クラス
50年以上前、私が小学校低学年のころ、教室の後ろの棚にはすでに引っ越していった級友の名前が貼られたままになっていた。私が教師に「この人は引っ越したよ」と言うと、「これはいいのよ」と言われた。当時は何がいいのかわからず、不思議なことがあるなと思っていたが、1クラス増やし、配属される教員を増やすための裏ワザだったのかもしれない。

