「安全神話」を作り上げるための不正
さらに、石破茂内閣が2025年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2025」では、「新増設は認めない」というもうひとつの原則も反故になった。骨太の方針にはこう記された。
「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建て替え等の具体化を進める」
いわゆる「リプレース」を認めるとしたのだ。廃炉にした分を新設するわけで、これを認めることによって「原発ゼロ」を目指すことは無くなったと言って良い。
まもなく福島第一原発事故から15年。原発を巡っては各地で様々な隠蔽や改竄など様々な不正が露見してきた。いわゆる「安全神話」を作り上げるために、書類上の数字を誤魔化すようなことが繰り返し行われてきたのだ。
最近も、中部電力が浜岡原発(静岡県)の再稼働審査において、地震データを故意に操作して揺れを過小評価する不正を行っていた疑いが2026年1月に発覚した。原子力規制委員会の立入調査では「計算過程の記録が残っていない」ことも判明。捏造の疑いが強まり、中部電力社長の林欣吾氏は電気事業連合会の会長を辞任に追い込まれた。
国民的議論がほとんど行われてこなかった
こうした不正や隠蔽、改竄は、他の原発でも繰り返し表面化。到底、国民の信頼回復ができたとは言い難い。再稼働ありきの姿勢を見ていると、事故以来「安全が最優先」と言い続けている政府の方針が虚しく聞こえる。
ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルのガザ攻撃、イスラエル・米国とイランの戦争によって、地政学的リスクがいよいよ大きくなり、日本のエネルギー確保が安全保障上の大きな問題になってきた。原油への依存を下げることを考えれば、経済効率が高いという理由で原発を重要視するのはわからないではない。だが、そのための、国民的な議論はこの15年、ほとんどと言って良いほど行われてこなかった。なし崩し的に再稼働が進み、60年を超える稼働やリプレースへと突き進んでいる。

