ロイター通信が取材した政府の倫理専門家は、「トランプ一族の暗号資産事業の取り組みと米国の暗号資産政策の監督者としてのトランプ大統領の公的な役割との連携は、近代米国大統領の歴史において前例のない利益相反を構成する」と述べた。しかし、一方で、「これだけでは法律違反に当たらない」とも指摘した。
つまり、トランプ兄弟が顧客とのセールストークの中で、トランプ大統領との面会や大統領からの優遇措置を明確に約束しない限り、法律違反にはならないというのだ。
そんななか、新たにトランプ大統領の利益相反が問われる案件が浮上した。
UAEの王族が一族企業に5億ドルを出資
2026年1月31日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ王族がトランプ一族の仮想通貨企業WLFの株式の49%を5億ドル(約775億円)で購入。その数カ月後、UAEは米国の厳重に保護されたAI半導体のアクセス権を獲得した」と報じた。
同紙によれば、この取引は秘密裏に行われ、WLFとアブダビ王族が株式の売買契約を締結したのが、トランプ大統領が就任するわずか4日前だった。そして就任前日にUAEはトランプ一族に代金の一部の1億8700万ドルを送金したという。
この出資により、トランプ一族とUAEはビジネスパートナーになったが、問題は利益相反の懸念である。
WLFは、同紙の取材に「大統領はこの件に一切関与していない。“政権の半導体戦略に関連している”という主張は100%間違いだ」と述べた。また、大統領の法律顧問は、「大統領は憲法上の責任に問われる取引には一切関与していない。トランプ氏の資産は信託になっており、管理は子供たちが行っている」としている。
しかし、米国憲法には公職者が外国政府などから許可なく報酬や贈り物を受け取ることを禁じる「外国報酬条項」がある。
ワシントンDCの元倫理弁護士で法学教授のキャスリーン・クラーク氏は、「これは明らかに外国報酬条項違反のように見えるし、もっと言えば実質的な賄賂のように見える」と同紙に述べている。
議会では野党・民主党も「利益相反の恐れがある」と批判しており、今後の展開が注目される。
「権力の収益化」を新たなレベルに引き上げた
所属政党を問わず、歴代の米国大統領の多くは公務から利益を得ているように見せかけることさえ避けてきた。しかし、トランプ大統領はカタール王室から4億ドル相当の高額な航空機を贈与されたり、外国政府からの贈り物を隠すどころか誇示している。
ニューヨーカー誌のカークパトリック記者は、「トランプ氏が大統領職を利用して金儲けをする機会を断った例を見つけるのは難しい」と述べているが、トランプ大統領は「権力はマネタイズ(収益化)できる」ことを徹底的に追求しているように見える。
これはトランプ大統領に始まったことではないが、トランプ氏はそれを新たなレベルに引き上げたことは間違いないだろう。
「権力の収益化」は「権力の腐敗」とも密接に関連しており、国家の指導者の腐敗は部下や組織を腐敗させ、民主主義の根幹を揺るがしかねない。米国ははたして権力を収益化するトランプ大統領から、民主的なシステムや社会を守ることができるのだろうか。

