終戦後に“徹底抗戦”した34人のストーリー

実は2019年、天皇ご一家は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を鑑賞している。戦争映画ではあるが、描いたのは「銃後」の日常だ。戦線を描いた『ペリリュー』とはだいぶ距離がある。しかも今回は、愛子さまによる初の単独映画鑑賞だ。というわけで、やっと「天皇制における愛子さまの役割」の話だ。

『ペリリュー』は登場人物が三頭身にデフォルメされているが、それ以外はとてもリアルだ。剣で相手の首を突くシーンも何度も描かれ、その都度、血が吹き出し、突いた側の顔に血が吹きかかる。1万人以上の犠牲になった日本兵のうち、生還した34人にフォーカスする。終戦から2年近く、洞窟で“徹底抗戦”をした34人。史実に沿ったストーリーだ。

海兵隊の公式写真。ペリリューの戦い
海兵隊の公式写真。ペリリューの戦い〔写真=From the Frederick R. Findtner Collection(COLL/3890)/USMC Archives/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

彼らは終戦の情報を得ていた。戦争終結や連合軍に進駐された日本を報じるアメリカの雑誌などを、米軍キャンプのゴミ捨て場から拾っていた。英語が読める兵隊が1人いて、「日本が負けた」ことが書かれていると言う。

本当なのか、どうなのか、彼らは意見を言い合う。キャンプで映画を見ただろう、という話になる。彼らは食糧などを盗みにキャンプに出入りしていて、映画上映を目にする場面がある(たぶん『キングコング』だ)。あれは作り物のジャングルだ、この写真も作り物だ、日本軍が負けるわけはない。そういう結論になる。

昭和天皇の戦争責任を想起させる

アメリカ兵たちの会話も描かれるが、日本兵の目線なのだろう、字幕は入らない。英語が苦手な私は、彼らが何を話しているのかわからなかった。が、唯一はっきりわかったシーンがあった。主人公の田丸と相棒・吉敷(声優は中村倫也)の投降シーンだ。

まず吉敷が「生きて帰るため」に投降を決意、田丸も同意する。端折るが、2人の投降をめぐり日本軍同士で撃ち合いになる。複数の死者が出て、吉敷も瀕死の重傷を負う。田丸と吉敷が米軍キャンプにたどり着き、田丸が取り調べに応じる。

敗戦を伝える雑誌や新聞を見せれば、全員が投降するのではという意見に対し、田丸が「それなら僕たちも見てますよ。でも全部ウソの、作り物だと思っていました」というふうに話す。それを聞いた1人の米兵が「crazy」と言う。はっきりと聞き取れた。

日本兵たちの「crazy」をさかのぼっていくと、昭和天皇にたどり着く。軍部が暴走し、国民が後押しした、といった視点は承知の上だが、とはいえたどれば行き着く先は昭和天皇という存在だ。『ペリリュー』で兵士たちがたてこもっていた洞窟には、大きな日の丸がかかっていた。米軍キャンプから食糧も煙草も盗んでいた彼らが、盗んだ布で作ったのだ。日の丸を見た上司が、「背筋がまっすぐになるな」というようなことを言っていた。その向こうにいるのは天皇だろう。