身の丈に合わない「万能感」
「プル」デンシャル生命の「ゴリ」押し営業を略して「プルゴリ」で通じるほど、同社のスタイルはネット上では有名だった。さらに、「ゴリ」には「ゴリラ」のような強さのイメージも加わり、ますますその怖さというか強さが共有されていった。この「ゴリラ」から派生して、同社の営業マンに多い髪型=ツーブロックを加えた「ツーブロックゴリラ」もまた、そのいかめしさをあらわすネットミームとして広まった。
こうした人たちが、なぜ「不適切行為」に及んだのか。ノンフィクションライターの窪田順生氏は、その理由について、プルデンシャル生命のような「『最強組織』と自分自身を重ねてしまうことで、身の丈に合わない万能感に支配されて、金銭感覚がまひしたり、自分のエゴが肥大化したりして、一般庶民には理解し難い『暴挙』に出てしまう」と分析している(〈なぜ「最強組織」から闇堕ち社員が続出するのか プルデンシャル、キーエンス、メガバンクの共通点〉ITmediaビジネスオンライン、2026年1月21日配信)。
窪田氏の洞察の通り、「プルゴリ」や「ツーブロックゴリラ」が万能感を抱いていたのかもしれない。ネット上で「プルデンシャル生命」と「伝説の営業マン」で検索してみよう。次から次へと「伝説」が語られているし、実際に、彼らの成果も収入もスゴイに違いない。
日本人にとって「生命保険」とは何か
注意しなければいけないのは、あくまでも「プルゴリ」や「ツーブロックゴリラ」がネット上で(のみ)揶揄されているところではないか。先に見たように、日本は生保大国ではあるものの、個人加入は少ない。市場規模をあらわす、GDPに対する生命保険収入保険料でも6.1%と、大勢が大儲けできるほどではない。
いくら「伝説の営業マン」だと誇ろうとも、生命保険市場は、まだまだ「保険のおばちゃん」や、企業等の単位での団体保険が多数を占めているのであり、実は、「プルゴリ」や「ツーブロックゴリラ」の存在は、そこまで大きくはない。
実は、これこそが、「彼ら」が不適切行為に手を染めた理由ではないか。どれだけイキがったとしても、いや、イキがればイキがるほど、ますます、自分たちの矮小さを自覚するほかない。そんな日本における生命保険の歴史と現実がつきつけるむなしさに、「彼ら」は耐えきれなかったのではないか。
むろん、「愛の伝道師たれ」という創業者ドライデンのことばに従って、金への愛を追い求めただけなのかもしれないし、本当の動機など、本人ですらわからないかもしれない。それでも、「彼ら」は、単に私腹を肥やそうとしたあわれな犯罪者にとどまらない。日本に生きる私たちにとって生命保険とは何かを問い直させる、そんな構造上の、歴史上の存在だったのではないか。
(初公開日:2026年1月23日)


