円安を食い止める2つの手段
【河野】こうした“万が一”の事態が発生したとき、政府が必要に応じて十分な歳出を拡大するためにも、財政の健全性を軽視すべきではありません。
不況時に景気対策として財政支出を増やすことは必要だと思いますが、最近のように景気が回復局面にあるときに、ダラダラとそれらを続けるべきではないのです。
岸田政権は2023年度に13兆円もの補正予算を編成しましたが、コロナ禍はとっくに終息していました。石破政権でも2024年度に14兆円もの補正予算を編成しました。いずれも規模ありきで、積算の根拠は十分に説明されませんでした。
【唐鎌大輔(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)】たしかに、大規模な災害や経済危機が頻発する中で、政府の借金がどんどん増えていけば、その負担に政府が耐えられるのか、市場が不安を抱くようになります。その結果、日本の財政が危ういと見られ、円が売られる動きが強まる可能性はあると思います。
ここで重要なことは、「本当に危ういかどうか」は関係ないということだと思います。「投機的な因縁」をつけられれば、政策当局は否応なしに、それへの対応を迫られてしまいます。特に、直情的な為替市場では、そのような動きが激烈化しやすいです。
この際、円安を食い止める手段としては「円金利を引き上げる」、もしくは「ドル売り・円買い為替介入を実施する」の2通りがあるかと思います。
円金利はそもそもインフレ調整後の実質ベースではマイナスという極めて低い水準にありますから、まずは「円金利を引き上げる」に訴えるのが正攻法になるでしょう。
しかし、金利を引き上げると「政府債務の返済負担も重くなり、財政が行き詰まる」という懸念に直面します。先ほど出てきた「どうせ利上げできないんでしょう」という思惑です。
2022年3月以降、すでにその展開に賭けて、円売りに注力している向きも相当にあると私は感じています。
中央銀行による大量の国債購入は問題含みの手段
【河野】おっしゃる通り、日本政府が借金を拡大し続けても大丈夫なのか、また金利が上がったときに利払い費の増大に耐えられるのか――これは最終的に、マーケットの心理に大きく左右されます。
つまり、実際の経済状況に特に問題がなくても、国の借金があまりに大きいと、ある日突然、「このままだと追加的な歳出に耐えられなくなり、政府は借金の返済に窮するのでは」という不安が金融市場に広がり、長期金利が急上昇するリスクが常にあるということです。
長期金利が上昇すると、利払い費が膨らみ、さらに公的債務が膨らむという市場の不安を呼び、悪循環に陥る可能性があります。理論上、経済ファンダメンタルズに問題がない場合に、財政危機が起こるケースを「サンスポット均衡」と呼んでいます。
一種の逆バブルのようなものですが、それを断ち切るために、急激な財政緊縮を行わなければならないとなると、今度は経済に大きなダメージが訪れます。
【唐鎌】中央銀行による大量の国債購入で、不安の連鎖を一時的に断ち切ることはできるでしょうが、もちろん問題含みの手段ですよね。

