アメリカや日本が介入しにくい

たとえ台湾に対してADIZ侵犯や金門島周辺の漁船取り締まりを行っても、それだけで米軍が台湾のために介入することはまず見込めない。実際、南シナ海では、米国の同盟国であるフィリピン当局が自国の排他的経済水域(EEZ)内で、中国の海警局から衝突を含む威圧行為を受けているが、これらの事案について米国は介入していない。つまり、中国にとっては「コストの低い挑発」なのだ。

佐々木れな『自滅する米中』(SB新書)
佐々木れな『自滅する米中』(SB新書)

米軍は台湾に対する「封鎖」や「侵攻」には対応する意志を示しているが、グレーゾーン活動に対しては慎重で、明確なレッドラインを引けていない。この曖昧さこそが、中国が現状を変更するための新たな機会・領域を与えているのだ。

米国にとって、グレーゾーン活動による統一過程は介入のハードルが高い。軍事侵攻のように明白な武力行使がなければ、日米安保条約や台湾関係法を根拠に軍事力を行使することは困難である。結果として、米国は何もできずに統一が進む姿を見守るしかなく、同盟国からの信頼は静かに失われていく。

言葉では台湾支援を表明し続けても、実際には抑止力を発揮できないという矛盾が露呈するのである。実際、具体的な支援を伴わない米国や日本によるフィリピン当局への支持表明は、中国の行動を抑止できていない。

日米同盟にとってもこのシナリオは試練となる。条約の適用対象外であるため直接の行動は起こせず、しかし何らかの対応をしなければ信頼性を保てない。このジレンマは同盟の実効性を著しく損なう。日本にとって戦争被害は及ばないが、最終的に同盟が空洞化し、地域の安全保障基盤が失われる。

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