軍隊ではなく海警局や取締船が動く

この例では軍用機が使われているが、グレーゾーン活動の特徴は、その実行主体が必ずしも軍ではないという点にある。中国海警局や漁業取締船、さらには税関や地方政府までもが動員され、「法執行」「安全管理」「気象観測」などの名目で、台湾周辺海域へのプレゼンスを拡大している。

香港を訪問する中国の駆逐艦
写真=iStock.com/EarnestTse
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例えば2024年2月、台湾が領有する島のなかで中国大陸に最も近い島の1つである金門きんもん島付近で、台湾当局が取り締まり中に違法操業していた中国漁船が転覆し2名が死亡した事故があった。

なぜ中国はグレーゾーンを選ぶ?

これに対し、中国が行ったのは、定番の「遺憾表明」ではなかった。本来台湾が領有する金門島周辺での中国海警局の巡視活動を常態化させ、周辺海域の管轄権を主張するという形で応答した。

この事例は、偶発的事象をあえて政治化し、自らの主張を正当化するという、典型的な「法律戦」の構図である。

ところで法律戦とは何か。

2003年の「中国人民解放軍政治工作条例」改正で新たに追加された概念である三戦(輿論戦・心理戦・法律戦)の一角である。輿論戦はメディア等を通じた敵戦闘意欲の減退、心理戦はプロパガンダ、軍事的威嚇、偽情報の流布などを通じた敵抵抗意思の破砕、法律戦は法解釈・法執行上の正当性による優位性確保をそれぞれ意味している。

では、なぜ中国はグレーゾーン活動を好むのか。

その最大の理由は、米国や日本が「手を出しにくい」領域だからである。平和的統一と同じ理由だ。