KGBも老いには勝てない
プーチン氏の古い友人では、ペテルブルク副市長の頃からの秘書役で、石油最大手ロスネフチ社長を務めるイーゴリ・セチン氏(65)も政治的影響力を失ったという。情報チャンネル「インサイダーT」(2月5日)によると、2012年から石油業界に君臨するセチン氏は、新しいエリート層に石油利権を侵食されているらしい。
別の情報チャンネル「インサイダー・ブラック」(1月15日)によれば、政権に最も近いオリガルヒ(新興財閥)で、金融やメディア業界を支配するコワルチュク一族も地盤沈下が著しい。ミハイル、ユーリーのコワルチュク兄弟は政権に近い強硬派で、ウクライナ侵攻を大統領に強く進言したと欧米で報じられていた。
ペテルブルクKGBでプーチン氏の先輩だったウラジーミル・ヤクーニン元ロシア鉄道社長、ビクトル・イワノフ麻薬取締庁長官らは既に引退した。
ウクライナ侵攻で中核的な役割を占める連邦保安庁(FSB)のボルトニコフ長官、国家親衛隊のゾロトフ長官らも病気説がネット上で流れている。政権中枢の要人の多くは70歳を超えており、男性の平均寿命が67歳のロシアではかなりの高齢となる。
こうした情報が事実なら、プーチン政権を支えてきた武闘派「シロビキ」の勢力が退潮し、いよいよ世代交代の時代に入ったことを意味する。
プーチンが言及した「後継者の条件」
今年で政権担当26年になるプーチン氏は、長年の同僚の引退や影響力低下に寂寥感や孤独感を感じているかもしれない。
自らも世代交代を意識している模様で、後継者問題にしばしば言及する。昨年9月、下院議員らとの懇談で、ウクライナ侵攻の特別軍事作戦参加者を「新しいエリート」と呼び、「祖国への奉仕に恐れと疲れを知らない人物がわれわれの後継者になる」と述べた。
今年9月の下院選で政権与党は、参戦した軍幹部多数を議員候補に擁立する予定だ。
情報チャンネル「インサイダー・ブラック」は昨年5月、プーチン氏は特別軍事作戦が成功裏に終了し、西側との間で包括的な合意が達成された場合、2030年までの任期を前倒しして退任することを検討していると報じた。その際、プーチン氏は憲法改正で権限が強化された国家評議会議長などのポストに就任し、「国父」の役割を果たす見通しだという。
同チャンネルは後継候補として、ミシュスティン首相、パトルシェフ副首相、デューミン大統領補佐官、アリハノフ産業貿易相らを挙げ、「比較的若く、優れた経営・管理経験を持ち、プーチン大統領に完全に忠誠を誓っていること」が後継の条件と指摘した。
長期独裁体制を維持するプーチン氏が安易に権力を手放すとは思えないが、ウクライナ停戦後のロシアは政治、経済、社会面で不透明感が強まるとみられる。世代交代の動きは国際情勢だけでなく、日露関係にも影響するだけに注視すべきだ。


