「2つの運動」で予防効果が倍増
運動の効果は「どれくらいの量をするか」だけでなく、「どんな種類の運動をするか」によっても異なる。運動には、酸素を使う有酸素運動と、酸素を使わず筋肉を動かす運動がある。
有酸素運動は、心臓や肺の働きを強め、血糖や脂質の代謝を整え、炎症を抑えることが知られている。そのため、大腸がんや膵がんなどの代謝異常と関わるがんに対して強い予防効果を示す。
一方、筋力トレーニングは筋肉量を維持・増やすことで基礎代謝を高め、肥満や筋肉の衰えを防ぐ。とくに高齢者では筋肉の減少が糖代謝の悪化につながるため、筋トレは乳がんや肝がんといったホルモン代謝や脂肪肝に関係するがんのリスクを下げる可能性がある。
国際的に行われた複数の前向きコホート研究やメタ解析によると、有酸素運動だけを行っている人でも、がん死亡リスクが有意に低下すると報告されている。また、筋力トレーニング(ウエイト・レジスタンストレーニング)を実施している人では、総死亡リスクが8~14%程度低いという疫学研究が報告されている。
さらに、有酸素運動と筋力トレーニングを併用している集団では、総死亡やがん死亡のリスクが15~20%程度低下するというデータもあり、「有酸素+筋トレ」という組み合わせが、「がん活」において効果的な戦略である可能性が示されている。
「少し歩き、少し鍛える」が最適解
その背景には、以下の生理学的な補完効果がある。
有酸素運動:血糖や脂質の低下、炎症の抑制、消化管機能の改善
筋力トレーニング:筋肉量の増加、基礎代謝の向上、ホルモンバランスの調整、加齢による筋力低下の抑制
両者のこれらの特性が相乗的に作用することによって、がん予防の効果がより強固になっていると解釈される。
実際の「がん活」としては、日常的に歩行や軽いジョギングなどの有酸素運動を行い、これに加えて腕立て伏せやスクワット、ダンベル運動といった筋力負荷を週に数回組み込むことが、最も現実的でありながら、科学的にも裏づけられた運動の実践法といえるだろう。
要するに、少し歩き、少し筋肉を鍛えるという単純な習慣の組み合わせが、長期的にはがん死亡リスクを下げる確かな手段であると結論づけられる。
最近はがんの予防だけでなく、再発抑制や生存改善といった治療効果にも、運動の有効性が示されつつある。
最近『The New England Journal of Medicine』に報告された「CHALLENGE試験」という研究では、大腸がんの根治切除後に補助化学療法を終えた約900人の患者を対象とし、3年間の運動プログラムを行う群と、従来の健康教育のみを行う群を比較した。
運動プログラム群の運動は、有酸素+筋力運動と、行動支援セッションを段階的に組み合わせ、週150分相当の中等度以上の身体活動を目標に設計された。追跡期間の中央値は約8年だった。

