やせ型の人でも運動には健康効果あり
これら2つの研究は、規模・方法論ともに国際的に評価されるもので、米国・欧州の統合解析は、運動が普遍的に「多部位がんに共通する予防因子」であることを示し、台湾のコホートは「少しの運動でも確かな利益がある」という実生活への適用性を示した。
すなわち、運動は高価な薬剤や複雑な治療に匹敵する「万人に開かれたがん予防薬」であることが、疫学的にも裏づけられたのである。
さらに、WCRF/AICRでは、身体活動とがんリスクの関連について、複数の部位で「確実(convincing)」あるいは「ほぼ確実(probable)」と評価している。とくに大腸がん、閉経後乳がん、子宮体がんでは、日常的に身体を動かしている人ほど発症リスクが低いことを示す一貫したエビデンスが蓄積している。また、国際がん研究機関(IARC)も、身体活動の促進が、がん予防に寄与する重要な行動要因の一つであると位置づけ、がん予防の国際的指針としてもこの見解を支持している。
日本においても、日常生活での歩行時間や、余暇の運動習慣が長い人ほど、大腸がんの発症リスクが有意に低いことが報告されている。さらに、乳がんや肝がんについても、身体活動の多い群でリスクが低下する傾向が示されている。
日本人は欧米に比べて平均BMIが低く、食生活や遺伝的背景が異なるにもかかわらず、欧米と同様の予防効果が再現されている点は注目に値する。これは運動が人種や文化を超えた「普遍的な予防因子」であることを強調している。
「週末だけの運動」でも効果はある
このように、国際的な統合解析と日本の疫学研究の両方が「運動はがん予防に有効である」という事実を示している。がんは複数の因子が重なって発症する病気であるが、そのなかでも運動は、最もシンプルかつ強力に作用する生活習慣因子の一つなのである。
運動パターンに関しては、最近発表された約8万5000人の前向き追跡研究もある。そこでは、運動を週1~2回に集中させた人でも、毎日コンスタントに運動する人と同様に、全死亡・心血管死亡・がん死亡のリスクが有意に低下することが示された。
とりわけがん死亡については、運動をまったくしない群に比べて約15~20%の低下が認められた。平日はほとんど運動せず、週末にまとめて中高強度の運動を行うスタイルの有効性が示されたのだ。
この成果は、「毎日必ず運動しなければならない」という心理的ハードルを下げ、忙しい人でもどこかで時間を確保して運動すれば、十分に効果が得られることを裏づける。もちろん、日常的に体を動かすことが望ましいが、実生活に即した柔軟なアプローチでも、十分に「がん活」につながることが科学的に示されたのである。

