お金を稼ぐのは簡単なことではない

私は国税職員として約13年間勤務した後、35歳でマネーライターとして独立の道を選びました。現在はおもに税金や投資などをテーマとするマネー関連の書籍・記事を執筆しています。

仕事柄、私は経営者や投資家の方にインタビューする機会が多くあります。そこで思い知らされたのは、「お金を稼ぐのは、やはり決して簡単なことではない」という事実です。

たとえば、不動産賃貸で億単位の資産を一代で築き上げた方にお話を伺った時のことです。その方は、かつての低収入生活から何としても抜け出したい一心で、日々の食事すら切り詰めるほどの節約を徹底。最初の不動産投資は、廃屋同然の田舎の古家を買い取り、それを賃貸物件にすることから始めたといいます。

もちろん、リフォームを業者に依頼する資金はなく、本業を終えた深夜や週末に、自ら修繕に明け暮れたそうです。そうして得たわずかな家賃収入と物件を担保に、また次の古家を購入しては自力で再生する……その地道な繰り返しによって、徐々に資産を増やしていったとおっしゃっていました。

また、株取引で1日100万円を超える利益を上げるという敏腕トレーダーの方を取材したこともあります。その方は、証券市場が開いている時間帯は文字通りパソコンの画面に釘付けになり、株価の動きに全神経を集中させ、瞬時の判断で売買を繰り返していました。

自宅のパソコン一つで大金を稼ぐというと、いかにも羨ましく感じますが、お話を伺うとその実態は過酷そのものでした。取引中はモニターから一瞬たりとも目が離せず、時には食事やトイレも我慢して取引を続け、証券市場が閉まる午後3時半には心身ともにクタクタになると語っていた姿が、今も強く印象に残っています。

このように成功を収めた方々の体験談はとても面白かったのですが、同時に「これは自分には到底真似できない」とも思わされました。やはり、楽をして一攫千金を得るような魔法は存在せず、彼らのように極端なリスクを取るか、プライベートの時間や人間関係といったものを犠牲にする覚悟がなければ、短期間で大きな富を手にすることはできないのだと思い知らされました。

派手な成功者ではない「普通の人」が億築く鉄則

しかし、私が相続税調査を通じて目の当たりにした富裕層とは、必ずしも投資や事業で華々しい成功を収めた人ばかりではありませんでした。むしろごく平均的な収入で地道に仕事を続けながらも、亡くなる際には億単位の資産を築き上げていた、というケースが大半を占めていたのです。

小林義崇『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)
小林義崇『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)

では、派手な成功者ではない「普通の人」が、いかにして億単位の資産を築き上げたのか。その答えは、「お金が増える仕組み(セッティング)」と、それを愚直に続けるための「お金に対する正しい考え方(マインド)」にありました。

たとえば、150円のペットボトル飲料さえ買わず、ティッシュ一枚もムダにしないような細かな節約を積み重ねて着実に貯蓄を増やした方。バブル崩壊やリーマンショックによる株式相場の暴落にも慌てることなく長期投資を続け、資産価値を高めてきた方。早くから税の知識を身につけ、手元に残るお金を増やす節税策を積み重ねてきた方。相続税調査の現場では、こうしたちょっとした工夫で堅実に富を築いた方々を数多く見てきました。

これら一つひとつの工夫は、実行してすぐに大金を生むものではありません。しかし、生活に取り入れて継続することで、徐々に家計へのインパクトは大きくなっていきます。

たとえば今150円を節約したとしましょう。このお金をNISAを使って平均利回り5%で運用し、50年後に換金すると約1700円に増える計算です。このような行動を積み重ねることで、誰もが大きな資産を生み出せるのです。

お金に対して、このような「仕組み(セッティング)」を適切に構築できているか。そして、お金に対する「正しい考え方(マインド)」を持っているか。この2つこそが、最終的に経済的な豊かさを手にできるかどうかを左右する、最も重要な鍵だと私は確信しています。

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