「無関心」という名の残酷なやさしさ

だから注意せずに放置する。それにより部下や後輩は自分の至らなさに気づき、行動を修正し、成長していく機会を失うわけだが、このような冷たく自己中な上司や先輩を、嫌なことを言わない「やさしい上司」「やさしい先輩」と勘違いする風潮があったりするため、この手の上司や先輩がのさばってしまう。その自己中な冷たさを見抜けない者があまりに多いのだ。

榎本博明『裏表がありすぎる人』(幻冬舎新書)
榎本博明『裏表がありすぎる人』(幻冬舎新書)

それは、部下や後輩自身も「嫌われたくない」という自己中の気持ちが強いからだ。それに加えて、「心が折れる」という言葉が広く使われるようになったことにも象徴されるように、厳しいことを言われるとすぐに傷ついてしまうといったレジリエンスの弱さがあるからだ。そんな社会の空気の中で、ただただ表面上やさしいだけの人間が増殖していくことになる。

やさしい上司だと思っていたのに、陰で自分のことをバカにするようなことを言っているのがわかりショックを受けたという人がいる。

「私は早とちりでミスが多くて、自分でも嫌になることがあるんですけど、上司は『ミスはだれにでもあるから、気にしなくていいよ』などと、いつもやさしい言葉をかけてくれるので、いい上司に当たってよかったって思ってたんです」

良い顔の裏で「使えない」と切り捨てる上司

「でも、つい先日、先輩が『とても見ていられないから、ほんとうのことを言うね。冷静に受け止めてね』って言って、その上司が私のことを『ほんとうに使えないヤツだ。ちょっと甘い顔をすると、反省も改善もせずにのうのうと仕事をしている』っていうふうに酷評してるから、見捨てられないように頑張らないと、って教えてくれたんです。

青天の霹靂でした。言いにくいことを言ってくれた先輩には、心から感謝しています。裏表の使い分けの酷い上司だとわかってよかったです。あんな人をいい上司だと思ってた自分がバカみたいです」

リスクの高い状況から安全を確認するビジネスマンのイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

ミスの多い部下に困るのは当然だが、そんなときでさえ「気にしなくていいよ。たいしたことないから」などと理解を示し、行動修正のためのアドバイスをすることなく、いい顔をする。やさしい上司を演じて印象をよくしようとしているわけだが、ほんとうの意味でのやさしい上司ではなく、じつは部下の成長について何も考えていない冷たい上司なのである。