ユニ・チャームの2012年3月期の連結決算は、売上高が前期より14%増の4283億円、営業利益は同12%増の520億円と、5期連続で最高益を更新しました。

いまだ不況風の吹き続ける中で、これは目覚ましい業績といえるでしょう。その最も大きな理由は、海外事業の成功です。1984年に始まり、90年代後半からアジアを中心に攻勢をかけ、現在では15カ国で製品を販売し、10カ国に生産拠点があります。

同社の海外での売上高は全体の47%。中国、タイ、インドネシアなど途上国市場の成長を取り込んで、大きく業績を伸ばしています。少子化等で逆境にある国内市場でも、大人用おむつやマスクで営業利益を維持。国内でジリ貧、アジアをはじめ海外市場でも苦戦続きという日本企業が少なくない中、同社はレアな存在です。

同社の海外市場での成功には、いくつかの要因があります。

最も大きいのは、得意分野(コア・コンピタンス)の紙おむつや生理用品など不織布・吸収体事業(以下サニタリー事業)にフォーカスし続けていることでしょう。

例えば、花王や資生堂などの大手は、海外進出の場合、洗剤やシャンプーなど粗利率の高い商品の市場投入を優先し、サニタリー用品は後回しになりがちです。ユニ・チャームは主力がサニタリー用品ですから、その間に先行して現地の市場を開拓し、シェアを獲得できるわけです。

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トイレタリー企業各社の新興国市場における売り上げの伸び

市場が拡大している国にいち早く入り、シェアを獲得するユニ・チャームの戦略は、的を射たものだと思います。日本製品の品質のよさは世界的に知られており、そのアドバンテージもありますから。

例えば、ユニ・チャームが先行して進出したインドネシアでの紙おむつシェアは約60%。中国の場合は、先行参入したP&Gのシェア40%超に対し、同社は約20%と3番手ですが、市場が急拡大しているので、売り上げそのものが急成長しています。

現地国の1人当たりGDPが1000ドルの段階で生理用品、3000ドルに達したら紙おむつで参入と、海外進出の基準もあるようです。現地人を日本人トップより高給のナンバーツーに置く組織づくり、現地工場を持ち、低所得者層に合った廉価な商品も開発、販売するといったローカライズの手法も業績に貢献しています。