キャッシュフローは2年連続の大幅赤字
ただ、同社の今後についてはいくつか懸念材料があります。拡大中の海外市場には当然、ライバル企業も参入してきます。中国に次いで同社の利益への貢献度が高いインドネシアには、2012年、P&Gとキンバリー・クラークが進出。中国でも花王が巻き返しを図っており、私はユニ・チャームがシェアと利益率を今後も維持し続けるのは難しいと見ています。
さらに国内市場では、業績を維持しているといっても好調な部門の数字と不振な部門の数字とが互いに相殺されている状態。今後の国内事業の成長については、私は疑問視しています。また日用品の中で紙おむつが最も価格が下落していることもあり、大人用おむつの成長をもってしても国内事業が堅固とまではいえないと思います。
台所事情も芳しいとはいえません。海外投資やM&Aの負担が近年増しており、前々期、前期とフリーキャッシュフローは大きく赤字になっていることがわかります。その資金は10年の転換社債発行でとりあえず賄われましたが、事業急拡大にともない今後の資金調達方法も気になるところです。
とはいえ、自社の事業分野に成長機会が見出せず、投資したくともできない日本企業は数多くあります。自社の資金規模に見合った水準で投資を継続するならば、成長機会が潤沢なフィールドを持つユニ・チャームは、見どころのある企業といえるでしょう。
みずほ証券シニアアナリスト 佐藤和佳子
岡山県生まれ。岡山大学大学院物理学専攻修了。住友信託銀行株式運用部で化学・繊維セクターを担当。2006年より現在まで、みずほ証券にて繊維・トイレタリーセクター担当アナリスト。
岡山県生まれ。岡山大学大学院物理学専攻修了。住友信託銀行株式運用部で化学・繊維セクターを担当。2006年より現在まで、みずほ証券にて繊維・トイレタリーセクター担当アナリスト。
(構成=高橋盛男 撮影=長谷川博一)