首相官邸は完成当初から「穴だらけ」

私が首相官邸と関わることになったのは、小渕恵三内閣の野中広務官房長官との出会いからだと言ってよい。短期間のうちに野中氏から大きな仕事を任せられることになり、私は国家の危機管理の中枢に引きずり込まれることになった。具体的には情報収集衛星とドクターヘリの実現である。

初対面の野中氏の印象は、初めて会った相手の急所、つまり男性のシンボルをいきなり掴んだという田中角栄流の「手口」を思い起こさせた。私は野中氏を人たらしだと思ったが、事実、野中氏の笑顔には抗しがたい魅力があった。

私たちはたちまち波長が合い、会って半月後の1998年8月、北朝鮮の弾道ミサイル・テポドン1号の発射を受けて偵察衛星導入の議論が巻き起こったとき、野中氏は私の考え方でまとめるよう指示した。現在の情報収集衛星(IGS)はそれが形になったものである。IGSの誕生の内幕は本書の第3章で詳しく述べたい。