アメリカ基準の49ミリよりかなり薄かった

私は日本で唯一、防弾の研究をしている田之上俊朗氏が経営する株式会社セキュリコ(当時)の資料に基づき、アメリカの大統領専用車以外では厚さ49ミリの防弾ガラスが最強だと伝えた。

ブッシュ政権当時の大統領専用車の場合、その重さを支えるためと防弾化のため、ガラス収納部はアラミド繊維ケブラーⓇなどで補強され、厚さ12センチの窓ガラスは上下しない。運転席の窓も肉声でコミュニケーションするための3センチの空間以上は動かない。

首相専用車を確かめてきた坂本氏は、具体的な厚さを教える訳にはいかないが、49ミリどころではない、かなり薄いと白状した。私は、日本の首相専用車がアメリカ企業に送られて防弾処理されていること、その企業は売り込みのために外国の警備担当者を招き、日本の首相専用車の防弾を請け負っていることをアピールし、すべてを見せていること、その事実を日本の警察が知らないことを明かした。

そこまで日本警察のセキュリティ意識が低いとは坂本氏も思っていなかったようで、目を丸くして唇を噛みしめた。

チェックに引っかかったのは26カ所

かくして私の官邸行きは3月26日に決まった。まだ工事中のこと、旧首相官邸(現在の首相公邸)の厨房を通って新官邸の玄関にたどり着き、靴をスリッパに履き替えた。床はまだ汚れたままで、照明の自動点滅装置の感度も未調整の状態だった。参加する参事官チームには坂本氏の他、足立敏之氏(のちに国土交通省技監、自民党参議院議員、2024年12月、モルディブで死去)らが参加し、セキュリティの穴に目を光らせた。

(写真=作者/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)
写真=Wikimedia Commons
総理大臣官邸(写真=っ/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

国家機密だからすべてを明かす訳にはいかないが、私たちのチェックに引っかかったのは26カ所。3日で手直しできるものから、中には数年かかりそうなものまであった。私はそれをリストにして坂本氏経由で古川官房副長官と内田総務官、杉田和博内閣危機管理監に渡した。

本書の冒頭で首相執務室と防衛大臣執務室の盗聴防止対策の不備を明らかにしたが、ここでは先進国の大統領や首相の官邸や執務室に施されている対策を、初歩的な問題から順に紹介しておきたい。