たった10分でも学力に効果が出るワケ
「活動」には3カ月毎日読書を続けるといった長期的な活動と、ふと『赤毛のアン』を読んでみたという単発的な活動の2つがあり、調査ではなく「実験」を行う大きな理由は、特性や環境と切り離した「単発的・短期的な活動」の効果を検出するためなのです。
Part2や3では共感力や思考力についての実験を紹介しましたが、それらの効果も確かに「単発的・短期的な活動」から生じているといえるわけです。とはいえ、ここまでは「読書活動が読書効果を生み出しうる」ということを説明しただけで、スモールインプット現象が活動から起こるかどうか、という点は説明していません。
短期的な読書活動が、「少しはやる」ことで比較的大きな効果が得られるスモールインプット現象を起こしうる心理現象としては、2つほど候補があります。
1つは「○○モード」です。
例えば、物語の読書を開始後、10分ほどあれば「物語モード」に入れるとします。一度物語モードに入ってしまえば、そのモードになっている時間にかかわらず、その効果は同じだとしましょう。もしこれらの仮定が正しければ、毎日短時間(この場合は10分)の読書をする人と、毎日2時間の読書をする人で、「○○モード」の効果は同じということになります。
つまり、スモールインプット現象が起こっているということです。
30分の読書だけで“見える世界”が変わる
もう1つは、「これまではまったく気が付かなかったのに、知ったとたん、それが頻繁に目に入る現象」です(これをバーダー・マインホフ現象、あるいは頻度錯誤と呼びます)。私たちは世の中をきちんと見ているようで、実はきちんと見ることができていません。
自分の知識で何重にもフィルターをかけ、取捨選択された世界だけを見ています。読書によって新しい知識を得たり、これまでの固定観念が崩されて、ものの見方が新しくなると、それに応じて世界の見え方が大きく変わります。
たとえ、1日の読書時間が30分であったとしても、そこから何らかの知識の更新が生まれれば、残りの23時間30分の生活の中で見えてくるものが変わるということです。
読書の効果は、読書をしている最中だけに生じるものではありません。読書をしたことによって得られた知識、言葉の力、共感力や思考力が、読んだ人の生活に影響し、その生活が再びその人の考え方や感性に影響します。その繰り返しがその人の特性となり、再び読書活動を生み出していくものだと思います。
ここまでスモールインプット現象が起こるメカニズムについて考えてきましたが、逆U字現象はどうなのでしょうか。

