双葉の最新設備が30億円へ導いた

追い詰められた浅野氏だったが、今回も地道な営業活動と新商品開発が同社を救うことになる。

コロナ禍以降、専務の宏介氏を中心に大型量販店や大手ドラッグストアチェーンをターゲットとして新たな販路開拓に取り組んでいた。3年にわたる営業活動が実を結び、これらの受注が拡大したのだ。

さらに、新たなタオルの開発も実現した。「エアーかおる」の立ち上げ後、浅野氏はこれを上回る新製品の開発に取り組んでいた。しかし、17年間取り組んでもなかなか成果が出なかった。岐阜本社工場の既存設備では撚糸技術に限界があったのだ。

そして双葉事業所に導入した最新鋭の撚糸設備がこの課題をブレイクスルーする。最新設備を使って開発を1年間続けた結果、ついに浅野氏が理想とする新たな糸ができた。この糸を使うことで、「エアーかおる」の吸水力を保持したまま、より柔らかな肌ざわりのタオルが完成した。

双葉事業所に導入された最新鋭の撚糸設備
写真提供=浅野撚糸
双葉事業所に導入された最新鋭の撚糸設備

このタオルは「わたのはな」の商品名で発売されると、大手百貨店を中心に販売量が急拡大した。

「わたのはな」
写真提供=浅野撚糸
「わたのはな」

新たな販路拡大と新商品効果により売り上げは急回復し、2026年度には過去最高の30億円を達成し、黒字に回復する見通しである。

病床で決意した頂上への挑戦

2024年5月、高熱を発症して病床にあった浅野氏は、銀行から浅野撚糸に派遣されていた顧問からある提案を受けていた。

「自分は正式に浅野撚糸に入社しようと思っている。だから双葉のプロジェクトにも真剣に取り組みたい。復興のシンボルになるためには中途半端な目標ではダメだ。どうせやるなら100億を目指したらどうか。浅野撚糸にはそのポテンシャルがある」と言われたのだ。

「顧問から話を聞いて、私自身も本気で100億を目指したいと思いました。最初に宏介に話したら『親父、これでようやく楽になれる』と言ったのです。自分たちが目指すべき頂上が見えたのでしょうね」

浅野氏が100億円に向けた決意を固めた直後、期せずして、経済産業省が「100億宣言」プロジェクトを発表する。これは、売上高100億円を目指す中小企業の成長を政府が後押しする制度だ。すぐに浅野氏はこの制度に応募した。不思議なことに宣言を発表したら、大きな商談がいくつも舞い込んできたそうだ。