従業員の介護支援サービス事業拡大へ
2012年は、団塊世代がいよいよ65歳以上に差し掛かり、高齢化率を急速に押し上げた。このタイミングで介護保険法が改正されているが、同時に市場動向を左右する4回目の介護報酬改定も行われた。
介護報酬とは、介護サービス事業者が利用者にサービスを提供した場合、その対価として事業者に支払われる報酬。09年度の報酬改定では、リーマンショック後の経済対策の一環として、制度開始後、初となるプラス改定が行われた。
帝国データバンクが11年末に発表した「介護サービス・有料老人ホーム業の経営実態調査」によれば、09年度の事業者数は7022社と、05年度の約2.5倍に急増。09年度の売上高合計も、05年度から2倍近い約4兆2000億円を記録している。
売り上げのトップランナーは、業界の老舗として在宅介護から有料老人ホーム経営まで幅広いサービスを安定的に提供しているニチイ学館。強いブランド力で業績を伸ばすベネッセホールディングスが2番手だ。
成長著しいのが、居酒屋チェーンを展開するワタミの連結子会社である、ワタミの介護である。07年度からの2年間で70%近い売り上げ増を記録している。同じく子会社のワタミタクショクでは、高齢者向けの配食サービスも展開する。
介護サービス事業は介護報酬に依存する部分も多く、国の財政事情や経済政策の優先順位に左右されるリスクはある。実際、介護報酬改定の諮問機関である厚生労働省の介護給付費分科会では、東日本大震災にかかる財政出動の影響によって「プラス改定は難しい」という声があがる。