計画停電で目覚めた「賢い電力網」

東日本大震災に伴う首都圏の計画停電は、都市機能の脆弱さを改めて浮き彫りにした。電車は動かず、信号は消え、家庭や店舗は真っ暗、工場も操業停止を余儀なくされた。こうした事態を回避できる可能性を秘めているのがスマートグリッドだ。

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スマートグリッドの仕組みと主なプレーヤー

それは、家庭や企業の需要家と電力会社を双方向の通信ネットワークで結び、リアルタイムに電力需給を調整する「賢い電力網」と意訳される。需要家側に太陽光発電や風力発電が普及し始め、その電力を蓄電できる電気自動車も登場し、需要家に電力会社の系統電力を使う、または使わないという選択肢が生まれたのである。その選択には、需要家の電力使用データを“見える化”し、電力会社との間で通信・制御するスマートメーターが不可欠になる。

世界に17億個ある電力量計のうち、スマートメーターの設置数は約10%の1.6億個(2011年時点)。すでに米国テキサス州の4電力会社は共同サイトを立ち上げ、それぞれの需要家のスマートメーターから得た情報を開示している。それを見て、家庭や企業は電気料金の安い時間帯に洗濯機を回し冷蔵庫の温度を下げ、工場を動かす省エネを実践、温暖化ガスの排出削減にも役立てている。

こうしたスマートグリッド移行へ向けた家電製品や生産設備の潜在需要は大きく、欧米ではIBM、インテル、シスコシステムズといった大手から、電気自動車充電ベンチャーのクーロン・テクノロジーズまで大小さまざまな企業が参入している。しかし、欧米と違い、送配電網が充実し、一般消費者による電力市場取引も行われていない日本では、電力使用データを“見える化”しても、スマートグリッドのニーズは少ないとみられてきた。それを一変させたのが東日本大震災だ。