早朝から行列、30分で売り切れる
インスタグラムで「自動販売機を開けます」と告知をすると、アスパラのシーズンは朝6時から客が列を作る。「5時にタイマーかけてきました」という人や、県外ナンバーの車も並んだ。早ければ30分で売り切れ、追加してもすぐなくなる。半年で200万円の投資は回収できた。
2024年、奈緒美さんは農山漁村女性活躍表彰の女性起業・新規開拓部門で農林水産大臣賞を受賞した。現地視察に来た審査員たちは特にガチャガチャに注目し、「新しい農業の展開」と評価。
筆者が受賞について聞くと、しいたけの話をしていた熱量よりもトーンが落ちた。
「とても光栄な賞とは理解しています。でも、しいたけの金賞の方が嬉しいんですよね……」
小声でそう言い、うつむきながら申し訳なさそうに笑った。県から推薦されて評価された賞と、自分が絶対に取ると決めて取りに行った賞。その言葉と表情からにじむ温度差が、彼女の農業への熱を物語っている。
「農家ってかっこいい」
義父からアスパラ農家を継ぐ前、奈緒美さんが農業に抱いていたイメージは、「ダサい、儲からない、汚い、時間がない」。だから「かっこいい農家になる」と決めた。自分のテンションが上がる服を作って着て、好きな髪型で畑に立ち、“農家らしくない農家”を目指した。
それから10年目を迎えた今、瑞雲ファームは年商2000万円超、自動販売機には早朝から行列、しいたけで金賞3連覇。かつて抱いていた偏見は、自分の手で一つずつ塗り替えてきた。
儲からないと思っていた農業で稼ぎ、時間がないと思っていた仕事で家族の時間を作り、ダサいと思っていた世界で、自分を貫く。
「農業の“かっこよさ”って何ですか?」。そう聞くと、奈緒美さんはニカっと笑って即答した。
「子どもからお年寄りまで、絶対に切り離せないのは食ですよね。農業は食にガッツリ携われる。作っている作物は違っても、スーパーに並んでいる野菜の一つひとつに、誰かの思いが詰まっている。老若男女の食を支えている農業って、めっちゃかっこいいと思いません?」




