なぜ高齢者ドライバーによる事故が起きてしまうのか。医師の和田秀樹さんは「ブレーキとアクセルを踏み間違えるなどの事故は、高齢や認知症のせいで起こる事象ではない。『一過性の意識障害』が原因だ」という――。

※本稿は、和田秀樹『「高齢者ぎらい」という病』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

車を運転するシニア女性
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです

「年をとると車の運転が下手になる」は本当

確かに高齢になると動体視力が落ちたり、反射神経は鈍くなったりするので、ほとんどの人は、はっきり言えば運転は下手になります。しかし、人間には適応力がありますから、それらの能力が落ちたぶん、運転が慎重になり、スピードを落として運転するようになります。

公共の道路でスピードを出して好きに走りたい人にとっては迷惑かもしれませんが、高齢者が慎重にスピードを落として運転したせいで、重大事故が増えるようなことはないはずです。

それでも重大事故は確かに起こっていて、事故を起こした高齢ドライバーが「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」などと話したりするケースもたびたび見られます。

じゃあ、その原因はいったい何なのでしょうか?

事故は、高齢や認知症のせいではない

ブレーキとアクセルがわからなくなるようなことは認知症の初期から中期でも現れる症状ではありません。

少なくとも、ブレーキを踏んだつもりがアクセルを踏み、しかも意図したのと違う動きをしているのにさらに深く踏み込むといったことは、高齢や認知症のせいで起こる事象ではないと私は断言できます。

そんなことが起こるのだとすれば、その原因は「一過性の意識障害」によるものと判断するのが妥当です。

「一過性の意識障害」とは、脳や身体の働きが一時的に乱れ、ほんの数秒から数十分の間、意識がもうろうとしたり、途切れたりする状態のことです。高速道路の逆走運転もこのような意識障害が関係しているのではないかと私は考えています。

本人の感覚としては、「一瞬ぼんやりしていた」「気づいたら事故を起こしていた」というように、時間の感覚や記憶が飛んでしまうこともあります。これは認知症のように脳の働きが慢性的に衰えるものではなく、急激な変化によって起こる一時的な現象です。